「今まで通りの生活を」 介護移行でサービス減 視覚障がいの67歳女性 家事支援が月20時間から8時間に


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 65歳を境に、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスから介護保険制度のサービスへと切り替わった結果、受けられる家事援助が月20時間から8時間に減ったとして、視覚障がい者の當山由美子さん(67)=那覇市=はこのほど、介護保険の認定取り消しを求めて県介護保険審査会に審査請求をした。

「今まで通りに生活できる援助が必要」と話す當山由美子さん=那覇市

 厚生労働省は、サービス内容や機能から障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則介護保険サービスが優先されるとしている。ただし、一律に介護保険サービスを優先せず利用者の状況に応じて市町村が判断する、ともしている。

 當山さんはこれまで障害福祉サービスで、障がいの特性や家庭の状況を踏まえて月20時間の家事援助を受けていた。ヘルパーに家事援助をしてもらいながら、自立した生活を送ってきており、「ヘルパーが手を貸してくれたら自分で買い物や料理ができる。今まで通りに生活できる援助が欲しい」と訴えている。

 當山さんは65歳になった2017年、介護保険認定審査で「要支援1」とされた。

 市は、當山さんが利用する障害福祉サービスの「同行援護(外出時の移動支援)」を根拠に介護が必要な人だと判断したが、當山さんは「ヘルパーから視覚情報をもらい手は借りているが、誘導してもらっていると判断されるのはおかしい」と指摘する。昨年に続き、「要支援1」と認定されたため、5月10日に県介護保険審査会に審査を請求。障害福祉サービスの家事援助を利用できるよう求めている。

 一方、那覇市ちゃーがんじゅう課は「介護保険サービスは国の基準に沿って上限額の中でしかサービスを提供できないので、現状ではそれぞれの希望に合ったサービスを提供するのは難しい」と説明。市は県介護保険審査会への弁明書で「審査・判定が公平公正に審議されており、適正に行われたもの」としている。


◇支援へ制度理解必要

 沖縄大学の島村聡准教授(社会福祉)の話 当事者はこれまで受けていた障害福祉サービス(家事援助)さえあれば自立した生活ができる、とサービスの継続を求めているにすぎない。当事者の生活実態をしっかり確認せずに、那覇市がサービスの量の調整を継続させる努力をしていないことが大きな問題ではないか。市は法律違反はしていないが、当事者の立場に立ってサービスを検討する努力をしているのかというところで疑問を感じる。形式的に65歳で線を引くのはとにかくやめてほしい。

 65歳を超えた障がい者が、従前のサービスを受けられるか否かは端的に言えば、対応する職員の意識の差にもよるだろう。当事者が障害福祉サービスが必要だとサービスの内容や質を求めている以上、障害福祉課の担当職員が制度を把握してより積極的に支援しなければいけない。