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受験生の継続支援不可欠 被災地 入試シーズン 行政と学校、試行錯誤


受験生の継続支援不可欠 被災地 入試シーズン 行政と学校、試行錯誤 大学入学共通テストに臨む受験生 =13日午前、金沢市の金沢大
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 入試シーズン到来を告げる大学入学共通テストが13日、始まった。石川県では元日に発生した能登半島地震で、避難所生活を余儀なくされた受験生も多い中、少しでも安心して試験に臨んでもらおうと自治体や大学、高校などが知恵を絞る。シーズンは始まったばかりで、継続的な支援が欠かせない。 (26面に関連)
 「地震がなかった場合よりも点数は下がると思う」。十分に勉強に取り組めていないという県立七尾高の3年の女子生徒(18)は、志望校の変更を考え始めた。
 避難所では大勢の人に囲まれた生活となり、自宅に残ることができた生徒も、散乱した物の片付けに追われている。男子生徒(18)は「直前の勉強は計画通りできなかった」と肩を落とす。
 七尾高が生徒全員の安否を確認できたのは5日。その数日後に教室を自習用に開放したが、予定していた補習はなくなった。「できることをやっているが思うようにはいかない」。樋上哲也校長はもどかしさを募らせる。
 学校や自治体は試行錯誤で受験機会確保の支援を続けている。生徒が会場周辺へ移動するためのバスを急きょ用意した能登地方の高校もある。石川県や文部科学省も即座に動き、馳浩知事と盛山正仁文部科学相が発生翌日の2日に協議。「追試会場の選択肢を増やしてほしい」との馳知事の訴えに、文科省は3日、県内に追試会場を設ける特例措置を発表した。
 入試は進学先や将来の就職などに影響する。高校生らの不安を取り除くのは文科省の重要課題だが、約2年前には「新型コロナウイルスのオミクロン株の濃厚接触者は試験を受けられない」との通知を文科省が公表し、批判の集中を受けて3日後に撤回に追い込まれたことがあった。当時の省幹部は「受験生の心情に配慮できていなかった」と悔やむ。
 現役幹部は「今回は受験票を不要にするなど、できる範囲の支援を打ち出したつもりだ。今後も被災地の要望に柔軟に対応したい」と語る。
 試験中の余震にも注意が必要だ。金沢学院大は以前から、試験室ごとに避難経路を決めるといった指針を定めている。今回の地震を受け、試験中の地震は震度や状況に応じて(1)試験をいったん中断(2)机の下に身を隠すほどの中断(3)避難を要する―に分けた対応マニュアルを新たに作成した。
 被災地の受験生は、共通テストが終わっても勉強に集中しづらい環境が続く。「各大学の個別試験に向けた学習支援が課題だ」「出願書類を紛失したり、受験料の振り込みができなかったりする生徒もいる」。高校教員らの懸念は尽きない。
 教育評論家の尾木直樹さんは、被災した生徒らが受験を諦めないように国や自治体が入学金や学費の減免などを進めた上で積極的に情報発信したり、ホテルの部屋を自習室として確保したりする支援策を提案する。「みんなから見守られていると伝われば、受験生も安心して本来の力を発揮できる」と指摘した。
大学入学共通テストに臨む受験生 =13日午前、金沢市の金沢大