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「被害者に責任はない」 性暴力への偏見なくし社会変革 早期介入・支援に尽力 REICO、28年の活動に幕


「被害者に責任はない」 性暴力への偏見なくし社会変革 早期介入・支援に尽力 REICO、28年の活動に幕 強姦救援センター・沖縄「REICO(レイコ)」の活動を振り返る代表の高里鈴代さん(右)ら=24日、那覇市の県立博物館・美術館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 28年にわたり性暴力被害者を支援してきた強姦救援センター・沖縄「REICO(レイコ)」(高里鈴代代表)が、民間ボランティア組織としての役割を終えたとして、9月末で活動に幕を下ろす。1995年の米兵による少女乱暴事件をきっかけに設立され、県性暴力被害者ワンストップ支援センターの先駆けとして、性暴力に苦しむ女性たちの受け皿となり、早期の介入と支援に当たってきた。性暴力への偏見にも粘り強く取り組み、社会を変革してきた。24日、那覇市の県立博物館・美術館で行われたシンポジウムでレイコの功績について、関係者が振り返った。

 レイコの活動を支援してきた、性暴力に詳しい角田由紀子弁護士はシンポジウムで「レイコの存在は大きい。沖縄における性暴力被害者支援の思想を根本的に変えたのではないか。単に個別の電話相談ではなく、社会を変えていく運動として、他の地域では起きていないことだ」と強調した。

“レイプ神話”

 レイコが発足した95年当時、性暴力に対する社会の意識は低かった。「性暴力は女性の人権侵害」という意識はなく、“レイプ神話”がはびこっていた。「強姦は暗い道で見知らぬ人によって行われる」「男性を性的に挑発した女性が被害に遭う」「本当に嫌なら抵抗できるはず」「女には強姦願望がある」「素行不良の女性が被害に遭う」といった偏見があった。性暴力の被害者は、社会の無理解や偏見に苦しみ、適切な援助を受けられないでいた。

 相談を受けて実態を知ったレイコは、レイプ神話に反論し崩していった。(1)実際には顔見知りによる室内の犯行が多いこと(2)女性の行動や服装がどうであろうと責任は全て加害者にあること(3)加害者は女性を屈服させ、支配する快感や満足感を得るためであること(4)被害に遭う理由は女性や子どもだからであって素行などは関係がないこと―。社会に訴え続けた。

警察にも要望

 警察も無理解や偏見の当事者だった。レイコは県内全ての警察署を回り、レイプ神話の誤りや性暴力の実態と本質の説明、警察官から被害者への質問の方法など具体的な知識も講義した。

 レイコの精神科医の竹下小夜子さんは「警察は『なんで~したんだ』などと、被害者を責めるような聴取をしていた。私たちの講義を受けた男性警察官から『してはいけないと言われたことを全部していましたよ』と言われた」と振り返る。

 96年当時、警察の性暴力被害対策部署には、女性警察官が配置されていなかった。レイコは県知事や県議会議長、県公安委員会委員長に宛てて女性警察官配置を要請。レイコの働きかけを受け、県警は、女性の性暴力担当者も配置するようになった。

 レイコと警察との連携は、全国的にも画期的だった。警察が被害者をレイコにつなぐこともあり、竹下さんは「早期に支援のための介入ができた」ことを大きな成果だったと振り返る。性暴力を受け、1カ月ほどたつとトラウマ(心的外傷)が形成されてしまう。その前に介入して支援できたため、被害者の回復も早かったという。

養護教諭に講座

 早期介入のためには学校とつながることも重要だとして、レイコは、子どもたちから相談を受ける養護教諭を対象にした講座も開いた。竹下さんは「レイコがやってきたように、県性暴力被害者ワンストップ支援センターも教育を提供し発展させてほしい」と望む。

 「性暴力は人権侵害」という意識を県内で根づかせ、社会も変えてきた。24日のシンポジウムで高里代表は笑顔で「頑張りましたね」と語り、会場に集まった大勢の人たちから途切れることのない拍手が湧いた。功績をたたえ、女性たちへのエールが込められていた。

 (中村万里子)