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「ツチノコ伝説」で活性化へ/奈良・下北山村/80年代探検ブームを再び


「ツチノコ伝説」で活性化へ/奈良・下北山村/80年代探検ブームを再び ツチノコの特徴(イメージ)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1980年代に幻の生き物「ツチノコ」の捕獲を全国へ呼びかけ、「探検隊」が結成された奈良県下北山村で、ツチノコを活用した地域振興が再び活発になりつつある。その正体は不明のままだが、当時の熱狂ぶりを見聞きした新たな世代が「ユーモアや遊び心を引き継いで村を盛り上げたい」と意気込んでいる。
 ツチノコはヘビに似た体長数十センチほどの未確認生物で、胴体がビール瓶のように太いのが特徴とされる。村では80年代後半に目撃したとの情報があり、当時村議だった野崎和生さん(77)を中心に88年、捕獲を目指す「ツチノコ探検隊」が発足した。
 生け捕りは100万円、抜け殻でも30万円。こんな懸賞金も話題を呼び、全国から200人超が隊に参加した。テレビや週刊誌も取り上げ、探検の様子を捉えようと報道陣が連日押し寄せる過熱ぶりだった。
 バブル期に巻き起こったツチノコブーム。関連した地域振興が各地で盛んとなり、岐阜県東白川村や和歌山県すさみ町、広島県上下町(現府中市)などでもツチノコ探しが行われた。だが「いくら探してもしっぽすら見つからなかった」(野崎さん)ため、下北山村の探検隊は90年に活動を終えた。
 約1600人いた村民は、過疎化が進んで現在は半数の約800人まで減った。そこで村が目を付けたのが、多くの人を引き寄せたツチノコ伝説だ。過去の記憶となった今こそ前に押し出し、村の活性化につなげようと2023年3月、一般社団法人「下北山つちのこパーク」を設立した。
 「35年前からタイムスリップしてきたツチノコの妖精」という設定のキャラクター「つちのこくん」を生み出し、地元産かんきつ「ジャバラ」を使った商品などのPRに活用。つちのこくんをデザインしたTシャツやキーホルダーも製作し、村の外にも人気が広がりつつある。パークでは野崎さんが収集してきたツチノコの文献やフィーバー当時の写真も見られる。
 事務局長の道下考平さん(43)は東京でアパレル企業の運営を手がけていたが、22年に村に移住した。地域振興を手がける中で「村にどれだけ魅力があっても第三者に分かりやすく伝えるのは難しい。ツチノコは強力なフックになる」と感じた。