新型コロナウイルス感染確認から4年の課題について、感染症疫学が専門の西浦博・京都大教授に聞いた。
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新型コロナは多くの教訓を残した。特に重要なのは「想定外」の流行の可能性を踏まえた危機管理体制を組まなければいけないという点だ。しかし透明性を持って適切に総括する機会がいまだにないことに、危機感を覚える。2022年に有識者の検証会議が開かれたが、流行中の短期間での実施で、不十分と言わざるを得ない。
国の感染症政策が、科学的な提言と一致しないことは珍しくない。だが新型コロナでは、専門家と政府の意見に違いが生じた際、なぜその政策を選んだのかという説明がなく、責任の所在が曖昧なまま物事が進んでしまった。
日本は諸外国と比べると死者を抑え込み、対策は比較的うまくいった。だが総括をしなければ、経験を次に生かせない。政府は新たな感染症に備え行動計画を見直しているが、このままでは「新型コロナ級」の感染症を想定した前例踏襲の計画になりかねず、コロナを超える感染症が出現した場合に対応できない。
一方で行政による総括に限界があることは確かで、第三者機関が主導し詳細に総括する機会を準備するのも一手だ。ガラス張りの場で振り返りを行うことで、次の感染症に備える第一歩を踏み出すことができるだろう。
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にしうら・ひろし 1977年大阪府生まれ。2020年より現職。新型コロナに関する国の専門家会合に参加。
(共同通信)