有料

燃え尽き予防にセルフケア 対人支援職向け講座 自身の価値観大切に 禅や呼吸、問いかけで探求 沖縄・那覇


燃え尽き予防にセルフケア 対人支援職向け講座 自身の価値観大切に 禅や呼吸、問いかけで探求 沖縄・那覇 「千手観音呼吸」の実践をする参加者ら
この記事を書いた人 Avatar photo 嶋岡 すみれ

 看護や介護、教育など対人支援の仕事に就く人たちの燃え尽き(バーンアウト)を防ぐため、セルフケアの方法などを学ぼうと、9日、那覇市の沖縄産業支援センターで「対人支援職のための燃えつき予防―GRACEプログラム―」(沖縄産業保健総合支援センター主催)が開かれた。講師は豊見城中央病院全人的痛みセンター長で医師の笹良剛史さんと、同院臨床心理士の神谷信輝さんが務めた。笹良さんは「自分のケアが相手へのケアの質を高める」と説明し、自分自身の価値観や身体感覚を大切にすることで、他者と適切な距離を保ちながら支援ができるとした。

 「GRACE(グレース)」はアメリカの人類学者で禅僧のジョアン・ハリファックスさんが開発したプログラム。(1)注意を集中させる(2)動機や意図を思い起こす(3)自分の身体・感情・思考に意識を合わせてから相手に意識を合わせる(4)何が本当に役立つかをよく考える(5)関わり、実践し、終結させる―を意味する英語の頭文字を取る。脳科学や心理学などの成果に基づいて「コンパッション(慈悲心・思いやり)」に根ざしたケアのあり方を育むために、5段階で構成する。

 人を支える仕事は他者の苦しみや痛みに触れ続ける。他者の苦痛を自分の苦痛のように感じる「共感疲労(思いやり疲れ)」に陥りやすいことから、気力が低下し離職するなど、燃え尽き症候群につながっていく。

「まずは自分のケアをすることが大切だ」と話した豊見城中央病院全人的痛みセンター長の笹良剛史さん=9日、那覇市の沖縄産業支援センター

 笹良さんは「共感疲労」を防ぐために必要な前提として「『私はあなたとともにあり、あなたの幸せを気にかけているが、私はあなたではない』という立場が大切だ。相手に巻き込まれないように、まずは自分に共感する」と強調。そのためには自分の内面を知り、気持ちや身体を調える重要性を指摘した。

 講座では、身体の感覚を味わう「ミニ立禅」や「千手観音呼吸」、なぜ自分にとって「コンパッション」が大切なのかを参加者が問い合うワークなどを実践。自分の価値観や感情、身体感覚を探り、見つめ直す方法を学んだ。

 笹良さんは「相手の苦しみに巻き込まれないことで、その苦しみを取り除いてあげたいというコンパッションが生じてくる」と語った。

 (嶋岡すみれ)