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【記者解説】遺骨返還は世界的潮流 研究目的の保管を戒める 琉球遺骨返還訴訟の控訴審判決


【記者解説】遺骨返還は世界的潮流 研究目的の保管を戒める 琉球遺骨返還訴訟の控訴審判決
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 琉球遺骨返還請求訴訟の控訴審判決は原告側の敗訴となったが、付言(ふげん)は遺骨の地元に帰る権利に踏み込んだ。先住民への遺骨返還は世界的潮流で、京都大が研究目的で遺骨を保管し続けることを戒めた形だ。京都大や関係機関は重く受け止めなければならない。
 返還問題について判決は、訴訟での解決に限界があるとも指摘した。返還を求める権利は国際人権法や憲法にはないと判示。民法では遺骨の所有権は、「慣習に従って祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者に帰属すると解するのが相当」としている。遺骨があった百按司(むむじゃな)墓には、原告ら以外の参拝者もおり、判決は原告らのみが祭祀の主宰者とは認めなかった。
 しかし、遺骨が本来あるべきところにないことは明らかな事実だ。付言の意見は、そういった現行の法制度などの下では、問題を解決する手段がないことを示している。
 遺骨持ち出しから約100年。持ち出された遺骨の一部は2019年、旧台北帝国大学(台湾大学)から県立埋蔵文化センターへ移管された。こういった流れもあり、関係者による解決に向けた協議は付言で指摘された通り、実行されるべきだろう。

 (金良孝矢)