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責任能力で主張対立 京アニ公判 最大争点の審理終了


責任能力で主張対立 京アニ公判 最大争点の審理終了 中間論告・弁論のポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 36人が死亡、32人が重軽傷を負った2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判第16回公判が6日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれた。最大の争点となっている刑事責任能力を巡り、検察側が中間論告で「完全責任能力があった」と主張した一方、弁護側は中間弁論で責任能力を問えるとは言えないと反論した。
 論告・弁論は通常の公判では1回だが、今回は2回行う異例の形式を採用。被告を精神鑑定した医師2人の意見が分かれる中、責任能力の実質的な審理が終了した。今後、裁判員らによる非公開評議を経て27日から情状や量刑の審理に移る。
 検察側は、小説コンクールに落選した被告がアイデアを京アニ側に盗用されたとの妄想を抱き、筋違いの恨みを募らせ犯行を決意したと指摘。他責的、攻撃的な性格が事件に作用したと述べた。
 犯行直前に放火をためらったことに触れ「物事の善悪を区別できていた」と強調。妄想が犯行の動機形成に与えた影響については「京アニへの怒りや焦燥感を強化した程度だ」とした。
 弁護側は、起訴後に精神鑑定した医師の意見を踏まえ、被告には重度の「妄想性障害」があったと指摘。アイデアを京アニ側に盗用されたなどとする妄想が動機形成に影響したと主張し、「妄想世界での体験や怒りによって善悪の区別や行動を制御する能力を失っていた」と強調した。さらに、「闇の組織のナンバー2」が関与したなどとする妄想は被告の世界を支配しており、10年以上翻弄(ほんろう)されてきたと訴えた。
 6日の公判では遺族側も被害者参加制度に基づいて意見陳述。「36人の命より自身の作品のことばかりだ」と被告を批判した上で犯行は被告の性格傾向が表れたもので妄想の関与はなく、完全責任能力は認められると訴えた。