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亡き父の面影求めて 82歳の金城さん、40年ぶりパラオへ 墓参団再開、きょう出発


亡き父の面影求めて 82歳の金城さん、40年ぶりパラオへ 墓参団再開、きょう出発 5年ぶりに開催されるパラオ墓参ツアーに参加する金城園子さん=27日、那覇市松川
この記事を書いた人 Avatar photo 渡真利 優人

 高齢化に伴い2018年11月を最後に中断されていたパラオへの墓参ツアーが5年ぶりに再開し、参加者が28日に出発する。約40年ぶりにパラオを訪問する金城園子さん(82)=那覇市=は、亡き父との記憶をたどるつもりだ。「今回が最後かもしれない。年も年だから」と声を詰まらせた。

 金城さんは3姉妹の次女としてパラオのコロールに生まれた。船舶関係の仕事に就いていた父の吉元英一さんは、戦時中に現地で亡くなった。幼少期の記憶はほとんどなく、母の吉元ナヘさんから聞く話を頼りに父の面影に思いをはせてきた。「父は3姉妹を1人ずつ抱っこし『お母さんの言うことをよく聞いてね』と言い残して亡くなったと、母が涙を流しながら話す姿が忘れられない」

 約40年前に母とパラオへ訪問した経験がある。75歳になった母へのお祝いと、再訪を切望していた気持ちに応えるためだった。「出発前、父はどこかで家庭を持ち生きているのではないかと母が話していた。亡くなったことが信じられなかったのだろう」と当時の様子を振り返る。

 金城さん自身も再訪したいとの気持ちがあったが、仕事の都合やツアーの中断もあり実現に至らなかった。そんな中、5年ぶりに墓参ツアーが再開するとの新聞記事を目にした。家族に相談し、即座に申し込んだ。今回は妹と一緒に訪問する予定だ。「ツアーが開催されてうれしい。沖縄の塔に参拝し、住んでいた家を探してみたい」と亡き父に思いをはせる。

 金城さんはロシアのウクライナ侵攻など、緊迫する国際情勢を憂う。「戦争はだめの一言に尽きるね。私たちも戦争被害者だから」と唇をかみしめ、平和な世の実現を訴えた。

 墓参を要望してきた「沖縄パラオ友の会」の田中順一代表は「パラオに行きたくてもさまざまな理由で行けない人が多かった。訪問を機にパラオに思いをはせてほしい」と語った。参加者が高齢化する一方、若い人や初めてパラオを訪問する人もいることに触れ「孫の年代に世代交代してきている。現地には日系人や県系人もいる。交流してほしい」と期待した。

 ツアーは5泊6日の日程で28日に出発し、29日にコロール島に入る予定だ。

(渡真利優人)