オスプレイ墜落 漁師ら“無防備”で捜索作業 日米政府「放射線リスク」説明せず現場活動を要請 16年安部で米軍は「防護服」


オスプレイ墜落 漁師ら“無防備”で捜索作業 日米政府「放射線リスク」説明せず現場活動を要請 16年安部で米軍は「防護服」 屋久島の南の海上で漁師らが回収したオスプレイの機材とみられる漂流物=30日午後4時ごろ、鹿児島県屋久島の安房港
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 米空軍の輸送機CV22オスプレイが屋久島沖で墜落した事故をめぐり、米軍や日本政府が、地元の漁師らに機体の危険性に関する情報を伝えないまま、捜索活動に当たらせていたことが分かった。専門家からは「人命軽視」と批判が出ている。

 オスプレイの機体には、放射性物質が使われていることが指摘されている。2016年12月にMV22オスプレイが名護市安部海岸で墜落した際には、防護服を着込んだ米軍関係者らが機体の回収作業に当たった。

白い防護服マスクで完全装備して作業を進める米軍関係者=2016年12月16日午後、名護市安部

 第10管区海上保安本部によると、今回の屋久島沖での捜索は、11月29日の事故発生直後に同管区から屋久島町救難所に連絡し、地元で漁船などを持つ人による捜索を要請した。

 救助要請を受けて屋久島の漁師らは同30日、島の南の海上を中心に捜索活動を実施。墜落した機体の一部とみられる部品など多数の漂流物を回収した。

 屋久島漁協や参加した漁師らによると作業に当たっての規制などはなく、注意点の説明も特段なかったという。参加した漁師らは船に積載可能な大きさの漂流物を回収していったという。第10管区海上保安本部は漁師らに機体の情報を伝えていないことについて、「放射性物資など、危険性の情報は、海保も米軍や防衛省から聞いていない。要請は人命救助で機体回収まで要請していない」と説明している。

 木原稔防衛相は11月30日の臨時会見で、オスプレイのエンジンや点火装置に放射性物質のクリプトンが使用されていると明らかにした。「他の航空機と同様」とした上で「クリプトンは希ガスで、水や食品の中に蓄積されず、装置中のクリプトンから放出される放射線量も極めて小さい。人体や環境への影響について問題のないレベル」と強調した。防衛省によると、12月1日現在、地元から調査の要望などはなく、事故現場付近で水などを採取して調査する予定はないという。

 墜落現場付近海域で漁をしている漁師は放射性物質が含有している機材があるとのSNS投稿に触れた。「影響があるほど含まれているなら死活問題になる」と不安を口にした。(明真南斗、大嶺雅俊、南彰)

識者「人命軽視」と批判

 矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授(物性物理学)は「軍事用のオスプレイにはどんな放射性物質の危険が潜んでいるのか明らかになっていない。民間の漁民が搭乗員の救助をすることはいいが、機体そのものの回収は絶対にやらない方がいい。重大な問題だ」と語った。

 前泊博盛沖縄国際大教授(安全保障論)は、同大に米軍ヘリコプターが墜落した事故の際に「被ばくの可能性がある」と言って米軍が規制線を張っていたことを指摘。「今回は米軍が何を積んでいたのかも明らかにしないまま、民間に捜索に当たらせている。人命軽視のあり得ない対応だ。日本政府もしっかり情報開示させるべきだ」と批判した。「これまで軍事機密と言って現場に立ち入れさせなかった米軍が、今回はあまりにも現場を放置し救助も後手に回っている」と述べた。 (南彰)