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アイヌ実名中傷 動画拡散 自民杉田氏、取材要求も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党の杉田水脈衆院議員は3日までに、アイヌ民族の関係者を出演者が「アイヌ利権」と中傷するユーチューブ動画を自身のX(旧ツイッター)投稿文に添付した。動画は出演者がアイヌの特定の個人を名指しで「ごろつき」と侮辱する場面を含む。杉田氏は賛同する立場から動画を拡散させ、メディアは内容を報じるべきだと書き込んだ。
 差別的言動を繰り返す杉田氏による、さらなるレイシズム(人種差別主義)助長が懸念される。国会議員としての資質が疑われる行為で、自民執行部の対応が問われる。
 動画で中傷を受けたのは、杉田氏の「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などとする言動を巡り、法務当局に人権救済を求めたアイヌの申立人。言動は申し立てに基づき人権侵犯と認定されている。この認定に反発した杉田氏が、申立人を攻撃する動画の拡散に乗り出した形だ。
 杉田氏が11月28日付の投稿に添付した動画で出演者は、政府が不正経理は認められないと明言するアイヌ文化振興事業について、不正の温床だと非難。申立人を含むアイヌの人々を「詐欺まがいの連中」とおとしめた。杉田氏については「尊敬している」と称賛した。
 投稿文で杉田氏は「動画の内容について、しっかり取材をして報道しなければ公平公正とは言えません」と主張。アイヌ側の訴えだけでなく、動画も取り上げて両論併記するよう促した。差別的言説だと批判される「アイヌ利権」論に「市民権」を与えるための世論誘導と受け取れる。