琉球新報は2023年の県内十大ニュースを選定した。名護市辺野古の新基地建設を巡る訴訟では国の代執行を認めるなど、県にとって厳しい判決が相次いだ。南西諸島への自衛隊配備強化など軍事要塞(ようさい)化が進み、不安が高まった。一方、プロバスケットボールBリーグで琉球ゴールデンキングスが初優勝。バスケの世界大会が沖縄で開かれ、日本代表が五輪出場を決めるなど、明るいニュースもあった。(2位同数で2本の記事)
【1】代執行敗訴 県に厳しく 新基地 埋め立て重大局面
名護市辺野古の新基地建設を巡る県と国の訴訟は、県敗訴の厳しい判決が続いた。大浦湾の軟弱地盤改良工事の設計変更申請の承認に関し、国が提起した代執行訴訟で福岡高裁那覇支部は12月20日、県に承認を命じる判決を言い渡した。
2000年の地方分権改革以降、実際に代執行されれば、初の事態となる。新基地の埋め立て工事は重大局面を迎えている。
設計変更の申請不承認を巡り、県が国の関与取り消しを求めた訴訟は3月16日、高裁那覇支部が県の訴えを退けた。県は上告したが、最高裁が9月4日までに上告を棄却するなどした。県敗訴が確定するも県が承認しなかったため、国は10月5日に代執行訴訟を提起した。
県が不承認の効力回復を求めた抗告訴訟は11月15日に那覇地裁が県の訴えを却下し、県は控訴した。
県が8月17日に高裁那覇支部へ提起した大浦湾のサンゴ類移植を巡る訴訟は11月14日の初弁論で結審し、判決期日がこれから指定される予定。
【2】キングス Bリーグ初制覇
プロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスが2022―23シーズンに初のBリーグ制覇を成し遂げた。
これまでは21―22シーズンの準優勝が最高だった。22―23シーズンはレベルの上がった西地区で一時、4位まで順位を下げた。それでも桶谷大ヘッドコーチ(HC)の掲げる「ポジションレス」のバスケと、強力なセカンドユニットを武器に勝ち星を伸ばした。5月のチャンピオンシップ(CS)決勝では“史上最強”と言われた千葉ジェッツに連勝し、CS負けなしで頂点に立った。
【2】沖縄でW杯 日本がパリ切符
日本、フィリピン、インドネシアが共催する「FIBAバスケットボールワールドカップ(W杯)」が8~9月にかけて開催され、沖縄アリーナで戦った日本代表が3勝を挙げた。パリ五輪予選を兼ねた大会で、日本は19位とアジア最上位となり、48年ぶりの自力での五輪出場を決めた。
1次リーグのフィンランド戦では最大18点差をひっくり返し、欧州勢から初の白星を挙げた。リーグ戦で敗退したものの順位決定戦に回った日本代表はベネズエラ、カボベルデに勝利。通算成績を3勝2敗とし、W杯で、史上初の勝ち越しを果たした。
【4】屋久島オスプレイ墜落 米軍、約1週間後に世界で停止
11月29日、鹿児島県・屋久島沖で米空軍横田基地(東京)所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが墜落した。乗員8人全員の死亡が認定された。米軍普天間飛行場に海兵隊仕様のMV22オスプレイが配備されているため、県や市町村からは飛行停止を求める声が上がった。一方、日本政府は米側に明確に飛行停止を求めず、安全確認を要請するにとどめた。県内では事故後もオスプレイが約1週間飛行を続けた。米軍は12月7日、事故の初期的な調査で機材の不具合の可能性が示されたと発表し、世界中で運用する全てのオスプレイの飛行を停止した。全世界での運用停止は初。
【5】陸自ヘリ 宮古沖墜落 南西シフト 基地負担さらに
防衛省・自衛隊は3月、陸上自衛隊石垣駐屯地を開設した。県内を拠点とする陸自第15旅団の師団化が予定され、敵基地攻撃能力(反撃能力)を担うミサイルの県内配備も検討される。南西諸島の防衛力増強は続く。
4月には宮古島市沖で陸自ヘリの墜落事故が発生。第8師団長ら10人が死亡し衝撃が広がった。
北朝鮮の「軍事偵察衛星」発射の通告を受け、国は4月下旬以降、落下物に備えて地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を那覇市や先島諸島に継続的に展開した。
発射のたびに全国瞬時警報システム(Jアラート)が鳴り響き県民の関心の薄れも指摘された。
【6】Uターン台風6号猛威
7月31日~8月7日、大型で非常に強い台風6号が沖縄地方に2度にわたり接近し、本島と周辺離島に甚大な被害をもたらした。
死亡者は2人、強風による転倒などで百人以上が負傷した。8月2日には、県内全世帯の34%となる34市町村21万5800世帯が停電となり、一部地域では長時間にわたった。離島では定期船の運休で食料品が不足。電話も不通となり、全面復旧は1カ月ほどかかった。
高気圧が大陸内部へ張り出し、台風は進路が阻まれて速度が遅くなり、沖縄地方をUターンするなど複雑な動きを見せた。
【7】コロナ5類 観光復活へ
新型コロナの5類移行によって、行動制限のない祭りやイベントが各地で通常開催された2023年は、沖縄観光も復活の兆しを見せた。入域観光客数は国内客のみではコロナ前を上回る水準で推移し、観光客の観光消費額や人泊数も増加するなど、順調に回復した。
一方、修学旅行のバス運転手不足や、空港関係者の人員が足りず国際線の復便ができないなど、観光業界の人手不足が顕在化した。8月の台風の影響で痛手を受けた観光事業者も多かった。
【8】那覇市前議長に収賄容疑
那覇市おもろまちの市上下水道局関連用地などを巡り、共謀の上、現金計5千万円を受け取り市議会で質問などを他の議員に働きかけたほか、議会対応を統括するなどの取り計らいをしたとして、県警は11月15日、那覇市議会前議長の久高友弘被告(75)=収賄罪で起訴=を収賄容疑で逮捕した。
久高被告らは2020年12月と翌年2月に議長室で現金の授受があったとされる。那覇地検は12月、久高被告のほか収賄罪で1人、贈賄罪で元総会屋の男(80)ら3人の計5人を起訴した。
【9】戦世の語り部 相次ぐ訃報
沖縄戦の体験者が今年、相次いで他界した。元白梅学徒で白梅同窓会長の中山きくさん=享年94=は1月12日に死去した。元ひめゆり学徒で、糸満市のひめゆり平和祈念資料館館長などを務めた本村ツルさん=享年97=は4月7日に死去。さらに対馬丸事件を体験し語り部として平和教育に尽力した平良啓子さん=享年88=が7月29日に死去した。
元なごらん学徒の語り部だった上原米子さん=享年96=は10月11日に他界した。糸満市摩文仁の「全学徒隊の碑」建立に取り組み、戦争体験を伝えてきた上原はつ子さん=享年94=は10月25日に亡くなった。
【10】人間国宝に祝嶺、大湾さん
染織家の祝嶺恭子さん(86)=那覇市=と、琉球古典音楽安冨祖流絃聲会の大湾清之さん(76)=那覇市=が2023年度の国指定重要無形文化財各個認定保持者(人間国宝)として認定された。祝嶺さんは「首里の織物」、大湾さんは「琉球古典音楽」でそれぞれ技や調査研究が評価された。国の文化審議会が7月21日に答申した。認定書交付式が11月29日にあった。両氏の認定で県内の人間国宝は10人、故人も含めると17人となった。
<次点>美ノ海が幕内昇進 県出身5人目
大相撲でうるま市出身の30歳、美ノ海(本名・木崎信志、具志川中―鳥取城北高―日大出、木瀬部屋)が県出身で2006年秋場所の琉鵬以来、5人目の幕内力士となった。新入幕で臨んだ九州場所は9勝6敗の成績を収め、県出身幕内力士としては24年ぶりに勝ち越した。