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一層の苦難 許さず 「なぜ沖縄に基地」自ら学んで 識者談話 新城俊昭さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事が代執行と大浦湾側の工事着手について「沖縄の苦難の歴史に一層の苦難を加える」とコメントしている。果たしてどれだけの若い人たちが、知事の言う苦難の歴史やそれを克服しようと闘ってきた先人に思いをはせることができるだろうか。
 琉球併合後、明治政府は学校教育から琉球史を排除して日本への同化政策を進めた。現在でもウチナーンチュのアイデンティティーを培う琉球・沖縄史教育が十分に行われているとは言えない。
 2020年に高教組と沖縄歴史教育研究会が発表した高校生対象のアンケートでは、普天間飛行場の移設場所についてどう思うかという設問で「分からない」という回答が43・7%と最も多かった。米軍基地の成立過程や役割を知らず、沖縄経済が基地に依存しているという誤った認識もあること、何より自己決定権を醸し出す琉球・沖縄の歴史や文化を教わってないということが大きいと思う。
 基地問題は簡単に解決できないが、困難だからこそ真剣に考えて意思表示する必要がある。国民の関心の薄さも問題だが、ウチナーンチュ自身が目の前の問題に向き合い意思を示すことのできない方が怖い。それは国民の無関心を助長する。
 報道を見ていると、大人でも「賛成でも反対でもない」と言う人が結構いる。沖縄で起こっている問題を自分の問題として捉え、自ら判断、行動していくことが苦難の歴史を断ち切るためにとても重要だ。
 なぜ沖縄に基地があるのかという根本を知らないと賛成、反対の言いようもない。教育の中でも、しっかりとやっていくべきだ。難しい問題だからこそタブー視しないで話し合うことが大事だ。
 (沖縄大客員教授、琉球・沖縄史教育)