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「使い捨て」構造、顕著に 人権守る体制づくりを 外国人実習生に避妊勧奨


「使い捨て」構造、顕著に 人権守る体制づくりを 外国人実習生に避妊勧奨
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信社

 技能実習生が、採用などを仲介する母国の送り出し機関から避妊処置を勧められている実態が判明した。背景には人手不足に悩む国内の中小零細企業が、一時的に働けない妊産婦の雇用を忌避する風潮が根強いことがある。識者は「実習生を労働力とだけみなし、“使い捨て”とする問題が顕著に表れている」と指摘。日本政府も実習生らへのマタニティーハラスメントを防ぐよう何度も注意喚起をしてきたが、浸透しているとは言いがたい。人権を守る具体的な体制づくりが急がれる。

 戦力ダウン

 「妊娠すると大変じゃないですか」。ベトナムの首都ハノイにある送り出し機関の男性職員は、実習生に対し、効果が数年持続する避妊リングの装着などの処置を勧めていると明かす。実際に行うかどうかは本人の意思だと強調した上で、「日本の受け入れ先も困る。子どもができたらしょうがないが、できないようにしている」と話した。

 ベトナムで別の機関を運営する日本人男性は「日本企業はもともと人手不足で実習生を受け入れており、妊娠を想定して採用していない。大企業と異なり、中小零細では1人欠けるだけでも困る。産前産後休暇に入れば、周りがカバーしなければならない。正直“戦力ダウン”だ」と漏らす。

 意識改革を

 実習生を巡っては、妊娠で退職に追い込まれるなどのマタハラが相次ぎ、妊娠を打ち明けられず孤立出産する例も起きている。

 このため出入国在留管理庁は2022年、外国人技能実習機構を通じ、実習生の女性650人を対象に聞き取り調査を実施した。送り出し機関や、監理団体などから「妊娠したら仕事を辞めてもらう(帰国してもらう)」と言われたことがあるとの回答は26・5%に上った。母国に戻り出産後、日本で実習を再開できることも、半数超が「説明を受けていないので知らない」と回答した。

 政府は関係先に制度の周知徹底を要望しているが、民間支援団体にはマタハラを受けたとする相談が引き続き寄せられる。入管庁幹部は「遺憾の一言。女性活躍を促す観点からも、受け入れ側が意識を変えなければいけない」と眉をひそめる。

 公的支援も

 技能実習制度は、人権侵害が相次いだことを踏まえ、政府有識者会議が昨年11月、適正化を図る新制度を創設するとの最終報告をまとめた。新制度では外国人材の中長期的な就労を促す方針だが、妊娠や出産を巡る支援など、課題は山積する。

 神戸大大学院の斉藤善久准教授(外国人労働法)は「技能実習生は、いずれ母国に戻る一時的な労働者という認識で見られ、受け入れ側の都合で安易に退職させられる傾向が、妊娠を巡る問題で顕著に表れている」と指摘。

 「外国人労働者は、仕事と在留資格が強く結びついている。妊娠して失職すれば、そのまま帰国を余儀なくされやすく、産休制度に対応できない企業には受け入れを認めるべきでない。同時に、産休を取らせる企業への公的な支援も検討されるべきだろう。母国側でも、妊娠や出産によって不利益な取り扱いをされないことを周知する必要がある」と話した。

(共同通信)