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離婚後共同親権 村上尚子弁護士 被害者がDV立証 問題


離婚後共同親権 村上尚子弁護士 被害者がDV立証 問題 村上尚子弁護士
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ドメスティックバイオレンス(DV)などの相談に対応している実務家としては、問題の多い法案だ。

 「離婚しても双方の親が責任を持つべきだ」という理念は素晴らしいかもしれない。しかし、理想論が先行し、それができない実態をしっかり見ずに法制審議会などで議論が進んでしまった。

 法案には、虐待やDVの恐れがある場合は、共同親権を認めないという除外事由が盛り込まれている。ただ、DVの立証責任を負うのは、被害者側だ。暴力を振るわれ、けがをした診断書があれば認められやすいが、精神的、経済的、性的なDVは証拠を残すことが難しい。実際の離婚訴訟でも、裁判所は離婚の原因となったDVの認定には慎重だ。

 そもそも離婚においては、経済的にも精神的、肉体的にも、男女間で力の格差があるケースが多い。裁判で共同親権を争うことになれば、費用や労力をかけられる方が有利だ。真摯(しんし)な合意ではなく、共同親権を受け入れざるを得ない人が出てくるだろう。離婚後もDV加害者などと連絡を取らざるを得なくなり、平穏な生活ができなくなる可能性がある。

 「子どもの利益」が強調されているが、共同親権になれば進学などに関して、一緒に生活をしていない親の同意が必要になってくる。そもそも子どもにとっても利益になるのか疑問だ。

 国会での法案審議では、こうした現場の実情をしっかり踏まえて議論してほしい。