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工藤会トップ死刑破棄 二審無期懲役、殺人は無罪


工藤会トップ死刑破棄 二審無期懲役、殺人は無罪 野村悟被告
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 特定危険指定暴力団工藤会が関わった一般市民襲撃4事件で、殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)などの罪に問われた会トップの総裁野村悟被告(77)の控訴審判決で、福岡高裁は12日、死刑とした2021年の一審福岡地裁判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。殺人について一審判決は「証拠の評価を誤り不合理」として無罪、組織的殺人未遂3件を有罪とした。
 ナンバー2の会長田上不美夫被告(67)については、無期懲役の一審判決を支持、控訴を退けた。
 野村被告を有罪とした3事件は工藤会総裁となった後に起きたが、無罪とした1998年の元漁協組合長射殺事件当時は工藤会前身組織の2次団体田中組で組長だった。
 市川太志裁判長は判決理由で、田中組の「意思決定の在り方は不明としか言いようがない」と共謀を認めなかった。
 一審判決は、田中組に上意下達の組織性があったとして、野村被告と実行犯の共謀を指摘。利権に介入ができないとする宴席での発言を根拠に、元組合長一族とトラブルがあったと認定した。
 市川裁判長は根拠とした発言について「殺害して排除することもやむを得ないと考えていたのを示すものと評価しているのであれば、飛躍がある」と指摘。一審判決の認定は「是認できないか、推認力の乏しいものにとどまる」と結論付けた。総裁となった後に起きた3事件は一審に続き関与を認めた。幹部の絶縁処分など工藤会の意思決定に関わっていたほか、田上被告も意向を最大限配慮していたと判断した。
 弁護人は判決を不服として即日上告。福岡高検の小池隆次席検事は「判決内容を十分に精査し、適切に対処したい」とのコメントを出した。