有料

【文化・芸術活動】照屋勇賢氏 芸術家 第46回琉球新報活動賞 社会のため情熱一筋 受賞者の足跡紹介


【文化・芸術活動】照屋勇賢氏 芸術家 第46回琉球新報活動賞 社会のため情熱一筋 受賞者の足跡紹介  照屋 勇賢氏(芸術家)
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 琉球新報社は第46回(2023年度)琉球新報活動賞の贈呈式を19日午後6時半から那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催する。入場無料、一般参加も受け付ける。祝賀会はない。同賞は「一隅を守り千里を照らす」を基本理念に、社会の一線で活躍する気鋭の個人、団体を顕彰する。今回は社会活動部門でNPO法人こども家庭リソースセンター沖縄(與座初美理事長)、地域振興活動部門で仲宗根朝治氏(FMよみたん社長、読谷村商工会長)、産業活動部門で宮城勝氏(沖坤社長)、文化・芸術活動部門で照屋勇賢氏(芸術家)、出版活動部門で新里堅進氏(漫画家)の1団体4個人に送る。受賞者・団体の功績を紹介する。

多様な沖縄像、作品に

 始まりは、ちょっとした「背伸び」だったという。「社会的にいろんな問題を提起したり、表現したりすることが、美術ができることだ」

 高校進学で美術の道を選ぶ時、難色を示す親に伝えた。高校の恩師にも背中を押され、沖縄の歴史や社会を題材にしたアートに磨きをかけてきた。大英博物館の学芸員から「現在の言説に応えるユニークな作品を制作する革新的なアーティスト」と称される存在だ。

 2001年の米同時多発テロ後、米国の星条旗が埋め尽くす光景に他者の「排除」を感じ取り、世界各国の国旗を等しく並べた一つの旗を作った。「平等な付き合い方」という解決の糸口を表現した作品だ。

 「沖縄には傷ついた者同士の連携をつくったり、自分たちの問題と海外の問題を一緒に考えたりするセンスがある」。世界で戦争や分断が進行するなか、そうした流れを食い止める沖縄の潜在力を感じている。

 来年には、オペラ「魔笛」の総合演出・舞台美術を担当するなど、活動の幅を広げている。「多様な人を受け入れ、期待される沖縄像をどんどん発信していければいい」と力を込めた。

(南彰)


 てるや・ゆうけん 1973年生まれ、南風原町出身。開邦高校などを経て、米ニューヨーク・スクールオブビジュアルアーツ修士課程修了後、ニューヨーク、ベルリン、沖縄を拠点に現代アートに打ち込む。2023年、紅型作家の金城宏次さんらと協働して基地問題を描いた「結い、YOU―I」が、沖縄の現代アートでは初めて大英博物館に収蔵された。