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【出版活動】新里堅進氏 漫画家 第46回琉球新報活動賞 社会のため情熱一筋 受賞者の足跡紹介


【出版活動】新里堅進氏 漫画家 第46回琉球新報活動賞 社会のため情熱一筋 受賞者の足跡紹介  新里 堅進氏(漫画家)
この記事を書いた人 Avatar photo 伊佐 尚記

 琉球新報社は第46回(2023年度)琉球新報活動賞の贈呈式を19日午後6時半から那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催する。入場無料、一般参加も受け付ける。祝賀会はない。同賞は「一隅を守り千里を照らす」を基本理念に、社会の一線で活躍する気鋭の個人、団体を顕彰する。今回は社会活動部門でNPO法人こども家庭リソースセンター沖縄(與座初美理事長)、地域振興活動部門で仲宗根朝治氏(FMよみたん社長、読谷村商工会長)、産業活動部門で宮城勝氏(沖坤社長)、文化・芸術活動部門で照屋勇賢氏(芸術家)、出版活動部門で新里堅進氏(漫画家)の1団体4個人に送る。受賞者・団体の功績を紹介する。

沖縄戦 描き続け45年

 漫画で沖縄戦や琉球・沖縄史を描き続け、昨年10月、デビュー45周年を迎えた。これまでに30作品を手掛け、ウチナーンチュに愛されてきた“県民的漫画家”だ。

 画家を目指していたが、高校生の時に読んだ元学徒隊員の手記「沖縄健児隊」に衝撃を受けた。「自分と同じ年頃の学生たちが戦場で動き回る様子が目に浮かんだ」。沖縄戦の物語を伝えるには漫画が分かりやすいと、漫画家を志した。

 「戦争漫画は難しい」と感じながらも描き続けてきたのは「目に見えない何かが自分を引っ張っている」からだという。ガマの中にいる夢や兵士が山中をさまよう夢もよく見る。「前世は兵隊かなと思ったくらい。夢もコマ割りがあって漫画を見ているみたい」

 重厚な作品は徹底した取材から生まれる。ひめゆり学徒隊の漫画「水筒」を描いていた時、元引率教師の仲宗根政善さんに「君は現場を見たか。見ないと駄目だ」と助言されたからだ。

 今も各地の戦争で住民が巻き込まれ、沖縄では基地強化が進む。「歴史を繰り返してはいけない。だから自分は沖縄戦を描かなきゃいけない」

 (伊佐尚記)


 しんざと・けんしん 1946年生まれ、那覇市出身。小島剛夕の劇画の影響を受け独学で漫画を描く。78年に「沖縄決戦」でデビュー。82年に「ハブ捕り」で第11回日本漫画家協会賞優秀賞入選。県外の人に沖縄戦を伝えようと、2023年、東京で開かれた自主制作漫画の大規模展示即売会「コミティア」に初参加した。今年は新作「やんばるの戦い」を発刊する予定。