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教員試験6割前倒し 24年度、全国教委調査 人材確保へ民間に対抗


教員試験6割前倒し 24年度、全国教委調査 人材確保へ民間に対抗 2024年度教員採用試験の前倒し状況
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 教員のなり手不足が深刻化する中、都道府県・政令指定都市など68教育委員会のうち約6割に当たる40教委が、2024年度に実施する公立学校の教員採用試験日程を23年度より前倒ししたことが4日、共同通信の調査で分かった。人材確保のため、早期化する民間採用に対抗する動きが広がっている形だ。沖縄県は23年度の試験を7月9日に実施したが、24年度は6月16日に実施する。
 教育実習期間と重なるといった、学生ら受験者の負担などに配慮し見送った教委も一定数あり、前倒しには課題もある。教職の魅力を高める施策がより重要だとする声もあった。
 文部科学省によると、従来は大学4年の7~8月に試験を行い、9~10月に合格発表するのが一般的だった。一方、民間企業の多くは6月までに内々定を出している。
 公立学校の教員採用試験競争率は22年度に過去最低の3・4倍となるなど低下傾向が続く。文科省は、民間に比べて遅い試験日程が一因とみて、1次試験の標準日を24年度は6月16日に設定。25年度はさらに1カ月程度早めて来年5月11日とすることを、各教委に今年4月に要請した。
 調査結果によると、前倒しした40教委のうち、24年度に試験を標準日の6月16日やそれ以前に実施するのは33。静岡、茨城など4県市は、1カ月以上繰り上げて5月に行う。東北6県と仙台市は7月13日で足並みをそろえた。
 前倒ししない28教委のうち、23年度も6月に実施していた北海道と札幌市、鳥取県は、標準日かそれ以前に実施。残る25教委は6月末~7月中に行う。
 日程を早めた理由では「民間企業の就職活動時期の早期化が図られる中、受験者数を確保する必要がある」(福岡市)などの声が多かった。
 前倒ししなかった教委からは「早期化の有効性を示すエビデンスが確立されていない」(千葉県)との意見のほか、「試験と教育実習期間が重なる受験生の負担が懸念された」(香川県)などの回答があった。
 調査は4月に実施。人事権がある全68教委(大阪府豊能地区教職員人事協議会を含む)から回答を得た。
 教員採用試験 公立小中高校の採用は主に都道府県と政令指定都市の教育委員会が実施する。1990年代前半はバブル景気の影響で人材が民間に流れ、低倍率だったが、90年代後半からは不景気による公務員人気の高まりで、小中高とも倍率が上昇した。その後は団塊世代の大量退職に伴う大量採用などで倍率低下が続く。採用試験に不合格となって再チャレンジを目指す「教員の卵」が減ったことにより、産休や病休で欠員が出ても穴埋めできない「教員不足」が各地で生じている。