2019年10月の火災で焼失した首里城正殿の再建工事が着々と進んでいる。26年秋の完成を予定する「令和の首里城」は、伝統技術の活用と継承のため木材や塗料、瓦などで県産資材を使用するほか、県出身の職人たちも多く携わる。「見せる復興」をテーマに掲げた令和の首里城は、再建工事の現場が公開され、訪れるたびに「新たな姿」を楽しむことができる。
■「見せる復興」
火災から約3年がたった22年11月3日、首里城正殿の再建工事が始まった。今回の再建に当たり、国と県は「見せる復興」をテーマに掲げ、作業工程の公開に力を入れる。現在、再建工事中の正殿を雨風から守るために覆う「素屋根」の見学エリアからは、再建過程を間近で見ることができる。
着工前には、琉球王国時代の祭事に倣った「木曳(こびき)式」を実施。正殿工事に使われる御材木(おざいもく)を調達先の国頭村から首里城公園まで運ぶパレードや、神木を運びながら練り歩く「木遣(きやり)行列」の儀式が行われ、令和の首里城は、県民に見守られながら、再建工事がスタートした。
■年内にも外壁塗装
正殿の柱や梁(はり)の「木軸建て方工事」は23年9月から本格的に始まり、同年12月に完了した。総本数513本の柱や梁(はり)が建て込まれ、建物の骨組みが完成した。24年5月には、宮大工の伝統儀式である「工匠(こうしょう)式」を実施し、屋根や軒回りの工事が終わったことを祝うとともに、建物の末永い安泰を願った。
工事を担当する沖縄総合事務局によると、今夏からは屋根に瓦をのせる「瓦葺(ぶ)き」の工事が始まり、年内には本格的な外壁塗装も予定されている。
■寄付金の使い道は
県には、19年11月から22年3月までに国内外から「首里城復興基金」として約55億円が寄せられた。寄付金は、焼失した首里城城郭内施設などの再建に活用され、装飾物や木材、瓦などの調達・復元費用に充てている。
さらに県は正殿の再建後を見据え、伝統的な建築技術に関する人材育成などに活用するため、22年4月に「首里城未来基金」を創設した。24年5月末までに約3億7000万円が寄せられている。
■製作物も着々と
首里城復興基金を用いて調達されている製作物は、24年度中に正殿の顔となる唐破風妻飾(からはふつまかざり)などの木彫刻14点、小龍柱などの石彫刻6点が、仕上げや設置のために国へ引き渡される予定だ。
正殿の屋根に取り付けられる龍頭棟飾(りゅうとうむなかざり)は現在、南城市の工房で製作作業が進められており、10月から12月にかけて正殿への搬入を予定している。
■新しい知見加え
「令和の首里城」は再建までの過程で、古文書の記述など新たな知見が多数発見され、平成の首里城よりもさらに往時へと近づく。玉城デニー知事は6月に正殿の工事現場を視察し、往時に近づく首里城について「新たな史料が見つかり、平成の時とはまた違う色や形が再現される事は、多くのデータが具現化される意味でも素晴らしい」とし「令和の首里城」が完成するまでの間も、日々変わる首里城の姿を楽しんでほしいと呼びかけている。
(與那原采恵)