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袴田さん再審きょう判決 静岡地裁 冤罪訴え半世紀


袴田さん再審きょう判決 静岡地裁 冤罪訴え半世紀 袴田巌さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「私は全然やっていません」。1966年の静岡県一家4人殺害事件で逮捕、起訴された袴田巌さん(88)は同年11月15日、静岡地裁で開かれた初公判で自ら無罪を主張した。それから58年。やり直しの裁判(再審)の判決公判が26日、地裁で開かれる。死刑囚となり冤罪(えんざい)を訴え続けたが、死の恐怖にさいなまれ、拘禁症状が今も残る。出廷はできず、代わりに姉ひで子さん(91)が判決に臨む。
 「一審、二審において正真正銘の無実の者であることを強く訴えてきました。それは血叫びでもありました」「本件冤罪を確実に勝利させることによって、全ての人の人権を守ることにつなげましょう」。裁判が続いていた79年、袴田さんは支援者集会に宛てた手紙で力強く訴えていた。
 闘争心を燃やした袴田さんに変化が見え始めたのは、80年ごろ。支援者への手紙には「全く異常な精神状態に陥っているのだろうか。不安である。全身から緊張感が取れない」と不調を示唆するようになった。別の手紙には「死刑囚は明日が来ないでくれと祈っている。あしたの死は限りなく恐怖を醸すのである」と記載。次第に妄想の世界に入り込む様子がうかがえるようになった。
 死刑確定後の81年、第1次再審請求をしたが認められず、2008年に第2次請求。14年に静岡地裁が再審開始を認め、死刑と拘置の執行停止により釈放されたものの、検察の即時抗告で審理は続いた。昨年3月にようやく再審開始が確定し10月から公判が始まった。
 主任弁護人の小川秀世氏は「法廷に立って審理を聞いてもらいたかったが、拘禁症で不可能だった」と肩を落とす。
 袴田さんは、急に笑い出したり、話しかけても返答しなかったりと、意思の疎通は難しい。一緒に暮らすひで子さんは「妄想の世界にいて、私たちの声は聞こえてない」と話す。それでも共に闘い、多くの支援を受けてたどり着いた再審判決。午後2時から言い渡される。