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自衛隊「全血輸血」を導入へ 防衛省、島しょ部での戦闘を想定 米軍との相互運用目指す


自衛隊「全血輸血」を導入へ 防衛省、島しょ部での戦闘を想定 米軍との相互運用目指す  防衛省
この記事を書いた人 Avatar photo 明 真南斗

 【東京】有事を想定して負傷した自衛隊員への輸血について、防衛省は21日、全ての血液型に対して投与可能で米軍が戦傷医療に採用している「低力価O型全血」を導入する方針を固めた。沖縄など島しょ部が「戦闘地域に隣接」と仮定し「重傷者が大量に生じた場合」の輸血を想定している。米軍との相互運用を目指している。

 低力価O型全血は、副反応リスクの低い人から採取したO型の血液をそのまま用いる「全血輸血」。従来は、赤血球や血小板など患者が必要とする血液成分のみを用いる「成分輸血」で、血液型で分けて輸血する方式を採用していた。

 防衛省が設置した「戦傷医療における輸血に関する有識者検討会」は21日、取りまとめた提言書を松本尚政務官に手渡した。有識者検討会は、米軍キャンプ瑞慶覧の「米インド太平洋軍血液センター」を視察した際に得た情報も踏まえ、提言書で「低力価O型全血を採用し、第一線近くから運用できることが必要」と記している。

防衛省が作成した輸血のイメージ図

 従来の血液型で分けて輸血する方式では複数の製剤を使い分ける必要があり、島しょ部で大量に輸血が必要となった場合に「迅速な輸血を実施するのは至難の業」とした。また、国内で従来採用されている成分輸血と比べ、止血に必要な血小板が温存されているため、致死率の低下が期待されるという。

 防衛省がまとめた資料によると、全国各地の自衛隊病院や医務室で採血して「本土」の地域ごとに集積し、輸送機で中継拠点へ運んで「島しょ部」で輸血を実施することを想定している。

 一方、本来は薬事承認が必要だが、防衛省は早期導入のために法解釈を変更して薬事承認を得る前から導入を始められるよう厚生労働省と調整を進めている。

(明真南斗)