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警察事件で初司法取引 詐欺容疑、税理士ら逮捕 運用拡大へ転換点か


警察事件で初司法取引 詐欺容疑、税理士ら逮捕 運用拡大へ転換点か 兵庫県警による融資金詐欺事件の司法取引の流れ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 警察が捜査し、元社長や税理士らが逮捕された自動車販売会社による融資金名目の詐欺事件で、捜査協力の見返りに刑事処分を減免する司法取引(協議・合意制度)が行われたことが5日、捜査当局への取材で分かった。2018年に制度が導入されて以降、東京地検特捜部が捜査した3事件で適用例があるが、関係者によると、警察事件では初めての適用とみられる。
 司法取引は組織犯罪摘発への期待から導入されたが、虚偽供述につながるとの批判もあり、検察当局は適用に慎重とされる。検察事件に比べ扱う件数が桁違いに多く罪種も多様な警察事件で実施されたことで、制度の運用が広がる転換点となるかどうか注目される。
 融資金詐欺事件は、20年10月~21年2月、粉飾した決算報告書を出すなどして銀行に融資を申し込み、4千万円をだまし取ったとして、兵庫県警が詐欺容疑で、23年11月に自動車販売会社の元社長や契約する税理士法人の職員ら3人を、今年2月に、同法人の税理士ら2人をそれぞれ逮捕した。
 同社は多額の負債があったといい、21年8月に破産手続きを申し立て、倒産している。
 司法取引は税理士法人の職員との間で成立。税理士法人側が負債など同社の財務状況を認識していた上で、粉飾した決算書類などを作成したことの立証に生かされたとみられる。検察はこの職員を詐欺ほう助罪に切り替えて起訴猶予とした。
 司法取引を導入した改正刑事訴訟法は18年6月に施行された。対象は刑法の贈収賄や詐欺、組織犯罪処罰法の組織的詐欺などの財政経済犯罪、薬物・銃器犯罪など。
 容疑者や被告が共犯者の犯罪解明のために供述や証拠で協力すれば、検察官は(1)起訴の見送り(2)起訴の取り消し(3)より軽い罪での起訴(4)より軽い求刑―などができる。これまでに明らかになっている特捜部の適用例は、外国公務員への贈賄事件、日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告の役員報酬過少記載事件、アパレル会社元社長の横領事件の3件。