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核融合施設、最大活用へ 次世代発電技術実現向け 産官学、連携強化


核融合施設、最大活用へ 次世代発電技術実現向け 産官学、連携強化 核融合の実験装置「JT60SA」=2023年4月、茨城県那珂市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 文部科学省が、次世代のクリーンエネルギーとして期待される核融合を使った発電技術の実現に向け、量子科学技術研究開発機構(QST、千葉県)などの施設や設備を民間企業や大学が利用しやすくすることが13日分かった。民間企業、大学側に研究機関のネットワークへ参加を促すことで、施設と人材を最大限活用する産官学のオールジャパン体制を整える狙いがある。
 核融合を巡り日本は、米欧や中国も参加する国際熱核融合実験炉(ITER)での共同研究を軸に実用化を目指すものの計画は遅れている。各国がそれぞれ独自に研究を進め新興企業の参入も相次ぐ中、日本としても当面は国内施設を研究の要にすべきだと判断した。
 核融合発電は、原子同士をぶつけて融合させ、放出されるエネルギーを電力に変換する仕組み。二酸化炭素(CO2)を排出せず、燃料の重水素は海水から無尽蔵に取り出せる。各国が注目する中、日本も2023年度に国家戦略を策定。今春には民間などの約50社が参加し産業協議会も設立。安全性を確保するための規制の議論も始まった。
 国内には、核融合反応に必要なプラズマ生成に成功したQSTの世界最大規模の実験装置「JT60SA」(茨城県)があるほか、核融合科学研究所(岐阜県)の六ケ所研究センター(青森県)、大阪大レーザー科学研究所(大阪府)、九州大(福岡県)などが設備を持つ。
 産官学の連携に関しては、これまでも共同利用の仕組み自体はあったものの、認知度が低く、QSTや核融合研が調整役になって主に企業の利用を促進する。今回、文科省は企業の多様なニーズに応えられるよう設備増強も検討。関連予算を25年度概算要求に盛り込む方針だ。
 QSTや核融合研が施設を紹介し、現地に人材を送る費用や開発費用の支援も検討する。プラズマを制御する超電導コイルの性能評価や、実験装置で計測機器の機能を検証するといった活用法を想定している。