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選挙区すみ分け提案も決裂 「野党共闘のモデル」に陰り オール沖縄とれいわに溝


選挙区すみ分け提案も決裂 「野党共闘のモデル」に陰り オール沖縄とれいわに溝 オール沖縄の衆院沖縄4区統一候補選考委に出席するれいわ新選組の高井崇志幹事長(左から2人目)=4月17日午後、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 第50回衆院選の投開票まで2週間。県内選挙区はこれまで政権与党の自民・公明陣営と辺野古新基地建設反対でまとまる「オール沖縄」勢力陣営との議席争いが焦点となってきた。今選挙ではれいわ新撰組が候補を擁立し、オール沖縄とつばぜり合いを展開するなど、従来とは様相が異なる。 

 「沖縄のみなさんの様々な思い(やめてほしい、立てて欲しい)を受け止め、一度立ち止まる決断をした」。11日、れいわの山本太郎代表は発表した声明で、沖縄1区の新人候補擁立取り下げを説明し、謝罪した。

 1区はオール沖縄が誕生して初の国政選挙となった2014年の衆院選で議席を奪取して以来、堅持してきた共闘の象徴でもある。公認擁立発表からわずか3日後の取り下げの背景には1区に対抗馬を立てる手法へ支持者からも反発があったとみられる。

■誤算

 れいわは2021年衆院選、22年参院選で比例票の県内得票率が全国で最多だったことを背景に、沖縄を重点地域に位置付けている。23年6月に4区から公認候補擁立を発表。1区共産、2区社民、3区立民、4区れいわとすみ分け、オール沖縄と協力態勢を築く青写真を描いた。

 4区には立民公認などオール沖縄側から複数の名前が挙がっており一本化へ向けて選考委が発足した。今年4月25日、選考委でれいわの高井崇志幹事長はすみ分けを提案。4区の統一候補がれいわでなければ「1~3区、4区も含めて(オール沖縄候補を)れいわ支持者が応援するだろうかと危惧する」「党としてもどういう対応になるか分からない」などと強行姿勢をのぞかせた。これにオール沖縄側は「暴論」だと一斉に反発した。選考委は協議を重ねたものの、れいわは協力関係から離脱。4区に加え、1区から擁立も発表し「オール沖縄全体に対する敵対行為」(共産党・小池晃書記局長)と批判を受けていた。

 14年の衆院選から10年。辺野古反対を一致点に「腹八分六分」でまとまり、野党共闘を続けてきたオール沖縄にとって、れいわが持ち込んだ党勢拡大を前提とする主張は「けして飲み込めない異物(オール沖縄幹部)」だった。別の幹部は「れいわの誤算は、オール沖縄の共闘の歴史を軽く見ていたことだ」と語った。

■一致点

 全国的に珍しい野党共闘を実現してきたオール沖縄だが、近年の首長選では連敗し、苦しい局面が続く。今年2月には代執行訴訟で県の敗訴が確定し、現実的に新基地建設工事が進む。阻止に向けた具体的な対抗手段が見いだせない状況が続く中でオール沖縄の求心力は低下し、往時の勢いは陰りを見せている。

 今選挙では南西諸島の軍備強化も争点となる。県民には基地負担の増加に反発も広がるが、オール沖縄としては配備撤回などでまとまることはできていない。

 構成政党と市民団体による「オール沖縄会議」で参加団体の一部から、自衛隊増強に対応するために規約を改定し、辺野古反対以外の運動に参加、協力を可能にする付則を新設する案が提案された。だが「当初の一致点の辺野古反対、建白書実現で連帯して運動を続けることに意義がある」などとして、今年2月の幹事会で新設しないことを全会一致で決定。自衛隊問題にはオール沖縄としては関わらないとした。関係者の一人は「デニー知事のほか、立民、保守系の支持者は自衛隊を容認している。そこを突き詰めるとオール沖縄は分解するしかない」と背景を説明した。

 野党共闘のモデルとされたオール沖縄だが、結成から10年の歳月を経て、県内の政治課題の変化に対応できていないとの見方もある。今回の選挙が新しい一致点を作り上げるきっかけとなるか注目される。

 (’24衆院選取材班)