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沖縄の変化 観察、参与し描く 事実ベースに生き残り考える 佐藤優氏インタビュー


沖縄の変化 観察、参与し描く 事実ベースに生き残り考える 佐藤優氏インタビュー インタビューに答える佐藤優氏=9月21日、名護市の名桜大学
この記事を書いた人 Avatar photo 與那嶺 松一郎

 2008年1月に始まった琉球新報の土曜付のコラム「佐藤優のウチナー評論」は、12日付で869回を数えた。15日に「私は『ウチナー評論』の連載を通じて何を学んできたか」と題して講演する佐藤氏に話を聞いた。

―10年余りの「ウチナー評論」の連載を通じて、ルーツである沖縄との関わりを深めてきた。

 「ウチナー評論のテーマは沖縄は生き物だということだ。生き物だから変化する。沖縄の変化を一部観察し、一部参与する中で描いていきたいと思ってきた。この間に私の中でも意識がいろいろ変容し、ウチナーンチュのアイデンティティーがどんどん強まってきた。注意しているのは事実と認識、評価を分けることだ。沖縄と日本の関係は今極めて複雑になっていて、その距離が開いていることすら双方が認識していない状況がある。別の情報空間になっている。米兵による不同意性交事件が明らかになった時に沖縄の人たちの中にどれだけの怒りが起こっているかについて、日本はあまりに鈍かった。そうしたことを伝える仕事が最近では多い」

 「今深刻なのは、国が与那国島をはじめ沖縄で離島を要塞(ようさい)化していることだ。ガザ紛争やウクライナ戦争を考えると、衝突が始まれば1年や2年の規模になる。その場合に物流が止まる。今突然物流が途絶した場合、沖縄にどれだけの食糧があるのかを国も県も把握しているのか。サトウキビ抜きのカロリーベースで沖縄の食糧自給率を出してもらいたい。台湾海峡有事と言って要塞化を進めながら、その時には県全体で食糧危機が起きることが容易に推定されるのにシミュレーションもしていない。それはとても不真面目なことだと思う。有事が起こると政府が言うのなら、本当に庶民を守れる計画なのかを県は国に聞いていくことだ。そうした指摘をすると有事を前提に軍備を受け入れるのかという意見が出てくるが、そうではない。事実として隘路(あいろ)があるということをつかんでおく必要がある」

―元外務官僚の経験もあり、激動する世界への視点も伝えている。

 「パレスチナでとんでもないことが起きているというが、では、それを起こしているイスラエルは一体どういう考えを持っているのか。ウクライナ戦争ではロシアが弱体化し、時間の問題で経済が瓦解(がかい)すると言われるが、行ってみるとどうも実態は違う。それらは良い悪いでななく、知っておかないといけないことだ。沖縄にとって重要なのはリアリズムだ。さまざまな事実をベースに沖縄の生き残りを考えていく」

(聞き手 与那嶺松一郎)