イタリア南部ナポリで19日に開かれた先進7カ国(G7)国防相会合はウクライナへの支援継続で一致したが、供与した欧米製長射程兵器によるロシア領内攻撃の容認問題には触れなかった。ロシアの反発を懸念して慎重姿勢を維持した形で、戦線拡大を避けたい思惑をにじませた。日本はウクライナでの戦闘を巡るロシアと中国、北朝鮮の軍事協力を警戒、各国と危機感を共有した。
(1面に関連)
結束
「ウクライナの自由と主権、領土の一体性に対する揺るぎない支持を再確認する」。各国国防相は19日に出した共同声明で、ロシアの侵攻や核兵器の使用の脅しを改めて非難した。
11月5日の米大統領選でウクライナ支援に消極的なトランプ前大統領が返り咲く可能性に警戒感が広がる中、ウクライナを断固として支え続ける意思を表明した。
議長国イタリアのクロセット国防相は会合後の記者会見で、G7初の国防相会合の意義を「国際安全保障の課題に一貫して立ち向かうという強固な決意を確認する機会となった」と強調した。
苦慮
ウクライナは対ロシア戦争の終結に向けた「勝利計画」で、米欧供与の長射程兵器によるロシア領への攻撃を認めるよう米欧に強く求めている。
各種兵器の供与で先鞭(せんべん)をつけてきた英国の積極姿勢とは対照的に、最大の軍事支援国の米国とそれに次ぐドイツは、ロシアとの直接対決の構図につながりかねないとして、攻撃容認に消極的だ。
オースティン米国防長官は会合に先立つ18日「勝利計画を公に評価する立場にない」と話していた。核使用をちらつかせるロシアへの苦慮が透けて見え、米国としても譲れない一線を示した形となった。侵攻開始から来年2月で3年。支援疲れから、欧米各国では停戦に関する圧力も高まりつつあり、劣勢に立つウクライナ側の焦りは募る。
アジアでも
ウクライナでの戦闘の影響はアジアにも及び、G7は軍事面や経済面でのロシアと中国、北朝鮮との協力強化の動きに強い危機感を表明した。
声明はロシアの戦争経済に対する中国の支援増大に深い懸念を示した。中国の動きがロシアの侵略戦争を継続可能にしていると批判し、北朝鮮とロシアとの軍事協力拡大も明確に非難した。
日本にはこうした軍事協力を各国に提起する狙いがあった。会合に参加した中谷元・防衛相は「G7の間で、インド太平洋地域の安全保障に関する共通の認識をより一層高めることができた」と評した。
(ナポリ、キーウ、ブリュッセル共同)