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【深掘り】沖縄が“訓練列島に” 自衛官トップ「本気度示す」と位置づける「目玉」訓練とは 日米キーン・ソード開始 


【深掘り】沖縄が“訓練列島に” 自衛官トップ「本気度示す」と位置づける「目玉」訓練とは 日米キーン・ソード開始  平良港下崎埠頭に初めて寄港した民間船舶(PFI船舶)「ナッチャンWorld(ワールド)」=22日午前、宮古島市平良荷川取
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日米共同統合演習「キーン・ソード25」が23日から本格化する。陸上自衛隊のオスプレイが那覇空港に初めて飛来するなど訓練内容や地域は拡大。県内では9月に始まった陸自演習から連接する形で、県外から機動展開した部隊がそのまま参加するため、既に負担増となっている。軍事施設のない北部の伊是名島から最西端の与那国島まで、島々は“訓練列島”と化す。 

 今回の演習の参加人員は日米合わせて4万5千人規模。2年前の前回演習の3万6千人から大幅増加した。

 ■念願

 今回の演習で計画する米軍オスプレイの先島展開や、陸自オスプレイの本島飛来は、防衛省や米軍にとってかねての念願だった。

 関係者によると、少なくとも2、3年前から地元の感触を確かめつつタイミングを探ってきた。手始めに地元の反発が比較的少ないと判断された奄美群島(鹿児島県)でオスプレイ運用の実績を重ね、2023年に初めて陸自のオスプレイを新石垣空港へ飛来させた。

 民間空港・港湾の利用も拡大させる。全国12空港、20港湾を使う。多くの島々で構成する沖縄県内や奄美群島では、島に部隊が展開したり物資を持ち込んだりするために民間インフラの使用は「必要不可欠」(防衛省幹部)との考え。今回の演習を通じ、有事の際の自衛隊などによる利用円滑化を前提に、優先的に整備する「特定利用空港・港湾」に指定された那覇空港を含め、民間インフラ使用の実績を積み重ねる狙いだ。

 ■「前線」の先島

 防衛省・自衛隊が県内での演習の「目玉」(防衛省関係者)と位置付けるのが、一連の衛生訓練だ。「前線」となる先島で負傷した隊員を手当てし、沖縄本島を拠点に県外の自衛隊病院も含めて「後方」へ送ることを日米共同で実施することを想定している。自衛隊那覇病院の増強を進める中、有事を想定し実際に機能するかを確かめる。

 吉田圭秀統合幕僚長は17日の会見で、衛生訓練の強化について「防衛力の抜本的強化や日米同盟強化に向けた本気度を示すものだ」と語った。

 相次ぐ訓練強化の動きに、県は警戒感を強める。今回の演習について県は9月、米軍、自衛隊を問わず県内でのオスプレイ使用自粛などを求めた。米空軍のオスプレイが嘉手納基地に飛来したことを受け、18日には基地負担増大につながらないよう、改めて求めた。

 県関係者の1人は「合同演習の増強は『日米間で確認したことだ』と言って、一方的に(演習を)進めてくる」と疑問視した。

 今回の演習に先立つ14日には、中国軍が台湾を包囲する形で軍事演習を実施するなど、沖縄周辺では訓練が相次ぐ。早くも22日にも、中国海軍の情報収集艦が訓練地域周辺に進出したのが確認された。同関係者は「互いにどんどんエスカレートしているように見える。対話による緊張緩和を見いだすべきだ」と訴えた。 

(明真南斗、知念征尚)