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世界の沖縄学: 沖縄研究50年の歩み (沖縄大学地域研究所叢書)
近来まれな、うちなーんちゅーが元気になる本である。
急速に進展するグローバル時代、琉球・沖縄の歴史文化は、国際的にどう認識され、どう評価されているか。復帰40年、万国津梁をキーワードに沖縄振興計画の「沖縄21世紀ビジョン」がスタートしたが、琉球・沖縄のアイデンティティー、国際社会での琉球・沖縄の可能性など、国際的な視点から沖縄を考えていくことが不可欠になる。
そういう時期の実にタイムリーな沖縄本だ。
日本学研究者として著名なヨーゼフ・クライナー博士は、国際的に琉球・沖縄研究を推進してきた開拓者。本書は、沖縄大学での特別講義、土曜教養講座、その他のセミナーや講演などを収録したものだが、副題の「沖縄研究50年の歩み」という個人の研究史にとどまらない、琉球・沖縄研究の国際的展開、それを開拓していく知的探検ともいうべき、わくわくする面白さがこの本にはある。
「ヨーロッパ製地図に描かれた琉球」など、ヨーロッパでの琉球・沖縄発見にまい進してきたクライナー先生の「日本文化の半分は沖縄にある」との主張は熱く、沖縄への限りない愛情に満ちたその語り口は優しい。
沖大講座の受講生の「ヨーゼフ・クライナー氏は神のような人だ。学者はおそろしい。今回の講義は生涯忘れないだろう。こんなに励まされた沖大講座はこれまでにない」という感想が紹介されているが、それが本書の意義・内容のすべてを語っている。
沖縄の自己確認として伊波普猷が開いた「沖縄学」は、柳田國男、折口信夫の碩学を経て日本学にその位置を占め、今日の民間学、地元学の先駆となり、現在では法政大学、早稲田大学などに沖縄研究所が設置されるまでになっている。それをさらにグローバルに発展させたのは、沖縄協会の清成忠男、故外間守善の諸先生そしてクライナー先生だ。
日中そして米との関係を軸に展開されてきた「沖縄学」は、今、日本と世界を再照射する「世界の沖縄学」として、新たな輝きを得たとの思いを深くする。
(沖縄大学客員教授・真栄里泰山)
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Josef Kreiner 1940年オーストリア・ウィーン生まれ。1971~77年ウィーン大学教授、日本学研究所所長を経て、2010年から法政大学国際戦略機構特別教授。著書に「南西諸島の神概念」など多数。