「書評」の記事一覧
<書評>『又吉栄喜の文学世界』 留保し根拠を問い直す
1996年に小説「豚の報い」で芥川賞を受賞した又吉栄喜は、沖縄戦によって廃墟となった浦添の半径2キロの内側を作品の舞台とし、米軍基地を抱え込んだ戦後沖縄の社会 ...
<書評>『中国で読む大城立裕文学』 揺れ動くアイデンティティー
日本において沖縄文学が論じられる際、特徴的な傾向が見られる。著者は「ある種国民的な総意が形成され、色眼鏡で以て戦後の沖縄文学が俯瞰された」と指摘する。政治・文 ...
<書評>『沖縄エッセイスト・クラブ 作品集41』 27人の個性と思い伝わる
40年以上も続く沖縄エッセイスト・クラブの作品集で、多様な経歴の会員27人が思いをつづった随筆となっている。文学風、日記、旅行記、地誌や歴史、論文調の時評など ...
<書評>『正しき地図の裏側より』 生きていてほしいと祈る
1994年―「失われた10年」の舞台裏で、不幸にも10代でホームレスとなった主人公・耕一郎。「父親殺し」というスリリングな展開も相まって物語にぐいぐい引き込ま ...
<書評>『沖縄県知事島田叡と沖縄戦』 戦争責任、冷静に見つめ
本書は、沖縄戦における県知事・島田叡と県警察部長・荒井退造について新聞記事や記録を基に徹底して検証した、数少ない著書の一つである。 島田知事が着任して早々に ...
<書評>『山城翠香 短命のジャーナリスト』 限られた資料で、生涯を丹念に
山城翠香(すいこう)は、明治末から大正初期にかけて『沖縄毎日新聞』で活躍したジャーナリストである。38年の生涯は詳細が不明であったが、本書の編著者・高良勉氏の ...
<書評>『日本社会とポジショナリティ』 沖縄語る上での必読書
本書が世に出た以上、ポジショナリティの問題を回避して基地問題や琉日関係を語ることはもうできない。ポジショナリティ概念を知れば日本人(やまとぅんちゅ)が琉球人( ...
<書評>『14年勤めた会社をやめて“働く””生きる”を聞いてきた。』 生き方として仕事選ぶ道標
直球のタイトルと、インタビューを受けた13人の顔写真が入った表紙が印象的な本書は、沖縄をはじめ世界で活躍する小説家、落語家、映像作家、ファッションスタイリスト ...
<書評>『琉球文学の展望』 様々な生が広がりを裏打ち
奄美・沖縄・宮古・八重山の島々のことばによって生活の様々(さまざま)な場面で歌われてきた短詩形・長詩形のウタの存在は、琉球文学を大きく特色付ける。本書には宮古 ...
<読書・BOOK>『奄美雑話 地理学の目で群島を見る』 古くて新しい課題を再認識
本書は奄美群島に通い出して20年以上になるベテラン地理学者による現代奄美論である。これまで、歴史学、民俗学、経済学などから奄美を論じた専門書は多いが、地理学か ...
<書評>琉球国王の肖像画「御後絵」とその展開 取り巻く世界、詳細に研究
本書は、本年3月に米国から返還されて大きな話題となっている、琉球国王の肖像画「御後絵(おごえ)」を学術的に考察した研究書である。ただし、返還公表直前の2月末に ...
<書評>『進藤榮一著作集~地殻変動する世界 第1巻』 日米関係の在り方問い直す
対米自立と東アジアとの共生を一貫して唱えてきた、気鋭の国際政治学者である進藤榮一氏の待望の著作集3巻の初刊本である。国際関係の視点から、日本の敗戦・占領史・戦 ...
<書評>『平敷屋朝敏の周縁』 豊富な知識と徹底した散策
何という本だろう。本書の特徴を、何と言えばいいか。仲本はサブタイトルに「論考・エッセイ集」と名付けている。足・散策と文献から生まれた作品群である。随所で驚嘆し ...
<書評>『「御願じょうず」なひとが知っていること』 暮らしにつながるもの
私は子供の頃、祖父と母と与那国島で暮らしており、終業式の日に通信簿をもらうと見せる順番があった。祖父、母、そして仏壇のご先祖さまたちだった。私はそれなりに欲の ...
<書評>『琉球をめぐる十九世紀国際関係史』 東アジアの世界観から解明
本書は、ペリー来航(1853年~54年)と分島改約交渉(1880年)に焦点を当て、琉球をめぐる国際関係について、日本・清朝・米国の外交史料を駆使した研究書であ ...
<書評>『沖縄における門中の歴史民俗的研究』 差異・変化絡む制度の全体像
奄美諸島から八重山諸島までの琉球弧において、門中は沖縄諸島(沖縄本島とその周辺離島)に限って分布する制度である。 とは言え、その沖縄諸島においてさえも、旧身 ...
<書評>『いま沖縄をどう語るか ジャーナリズムの現場から』 語らねば押し流される
本書は、法政大学沖縄文化研究所創立50周年記念シンポジウム「いま沖縄を語る言葉はどこにあるか―復帰50年目のジャーナリストたちの挑戦」の登壇者が当日の発言を基 ...
<書評>『「守礼の光」が見た琉球』 米占領の正当性をアピール
祖父母が脚のすねのことを“イチゴーセン”と呼んでいたのは「米合衆国一号線」(現国道58号)に由来していたのか!本書のとあるページに目を通していた時に、急に合点 ...
<書評>『宮古歌謡の研究 続2 ―歌謡に謡われた地名・場所―』 歴史空間の一端明らかに
地名には、その土地で生きる人々の生活様式や世界観が投影されている。特に歌謡に謡われた地名と場所を探ってみると、人々の生活空間から生まれ育まれたという強い要素に ...
<書評>『沖縄・奄美の島々を彩る歌と踊り 民俗芸能の伝統と創造をめぐる旅』 知的好奇心満たす充実論考
八重山の叙情歌・トゥバラーマの一節に「ウター イズスドゥ ヌス」(歌は歌う者こそ主)のフレーズがある。これは歌の本質を突くものだが、その一方で聴衆をはじめとす ...
<書評>『在日米軍基地 米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史』 多国間安保へ半歩先読む
国連憲章は侵略や平和の破壊に対して、「国連の統制下」で強制行動を止めるための軍隊設立を規定している。その軍隊は加盟国が提供することになっている。だが、朝鮮国連 ...
<書評>『詩集 今はむかし むかしは今』 沖縄的なもの表象する戦略
詩風はサウダージ、哀感、寂寥(せきりょう)、残存への共鳴。イクサの幻影と残存が同居する島の風景、場所の記憶の喚起で、言葉を紡ぐ。詩語は喩法をほとんど使わない。 ...
<書評>『日本バスケの革命と言われた男』 信念貫く指導者の姿
バスケットボールに興味のある人なら、全く無名であった辺土名高校が全国高校総体で3位入賞を果たしたことを一度は耳にしたに違いない。1978年、筆者である安里幸男 ...
<書評>『土地の記憶に対峙する文学の力 又吉栄喜をどう読むか』 生者と死者繋ぐ土地の磁力
又吉栄喜作品を読むと時折、迷子になる。自分の居場所が分からなくなる。時折怖くなる。足がすくんで動けなくなる。もしかしてその先には魑魅魍魎(ちみもうりょう)が潜 ...
いま注目のニュース
一覧へ
![](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2024/07/ニュースレターバナー_20240704.png)