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コストコ再販店、沖縄県内でも相次ぐ出店 「おひとりさま」や「中北部」ニーズに対応 専門家がみる今後とは


コストコ再販店、沖縄県内でも相次ぐ出店 「おひとりさま」や「中北部」ニーズに対応 専門家がみる今後とは 8月24日にオープンするコストコ沖縄南城倉庫店=6月、南城市
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 沖縄県内初となる米国系会員制スーパー「コストコ」が南城市で8月24日にオープンするのを前に、仕入れた商品を小分けにして販売する「再販店」の出店の動きが県内で相次いでいる。会員にならずに商品を購入でき、コストコの店舗まで直接行く手間も省ける再販店は全国各地で増加している。県内では豊見城市に既にある再販店に加え宜野湾市、うるま市などで出店が予定され、コストコから離れた本島中北部や少量の商品を求める客層をターゲットに裾野が広がりそうだ。

 コストコは会員制のビジネスモデルや大容量・低価格の品ぞろえが特徴。小売店のイメージがあるが、「コストコホールセール」という企業名の通り卸売(ホールセール)業者でもあり、ビジネス会員の事業者が商品を仕入れ再販することが認められる。再販店では会費を払わずに手軽に商品を買えるメリットがある一方、仕入れにかかる経費などが上乗せされるため、コストコ店舗の商品価格よりはやや高くなる。

■売れ筋、勝算は

沖縄アウトレットモールあしびなー内にあるコストコ再販店「KOTOCO(コウトコ)」=豊見城市

 県内では2023年3月、豊見城市の「沖縄アウトレットモールあしびなー」内にコストコ再販店の「KOTOCO(コウトコ)」が開店した。運営する琉2ダイレクト(糸満市)はグループ会社で物流業を手掛け、もともと自社の沖縄限定通販サイトで九州のコストコ店舗から仕入れた商品を扱っていた。コストコ商品が県内の顧客に好評だったことから実店舗を構えた。

 店内にはコストコ人気商品のバスティッシュ(トイレットペーパー)をはじめ日用品や飲食料品など500品目が並ぶ。コストコの正規商品以外にも、展示品や外装破れなどいわゆる〝訳あり品(アウトレット品)〟も取り扱う。日本復帰前の米統治下から沖縄の家庭で親しまれてきたキャンベルスープも売れ筋の一つだ。土日にはパンやマフィンといった賞味期限の短い商品を小分けにして限定販売しており、週末を狙う来店客が少なくない。

 8月24日に開業する「コストコ沖縄南城倉庫店」からも商品を仕入れられれば、九州からの商品の輸送コストを抑えられる。これから県内で再販店が増えそうだが、琉2ダイレクトの馬場昭佳代表は「再販のみならず商品の配達まで対応しており、配送の強みも生かしたい」と語る。

「KOTOCO」ではコストコの商品約500品目を扱う=12日、豊見城市

 沖縄本島中部のうるま市喜屋武では、20台ほどの駐車場スペースを備えた再販店「うるコス」が8月25日にオープン予定だ。店舗から南城市のコストコまで、時間帯によっては車で1時間以上かかる。「1個のパンを買うために遠くの大型ショッピングセンターに行くより、少しだけ高くても身近なコンビニで済ませたい」(経営者の男性)という顧客心理にアプローチをかける。

 パンなど食品を小分けする際に必要な保健所の許可も取得し、店舗には食品衛生管理者を置く。日々コストコから仕入れた商品を小分けし、利益を上乗せして売り出すのが再販店の収益構造になるが、経営者の男性は「食品を扱うコンプライアンスも守りたいのでそれなりに初期費用はかかる。毎日仕入れに行くコストも考えると(ビジネスとしての成功は)言うほど簡単ではない」と見通す。

■あの既存店も

 低価格を打ち出す沖縄の既存の小売店が、店内の一角にコストコの商品コーナーを設ける動きも。

 ディスカウントショップ「ビッグワン」では、ひかり商事(宜野湾市)がフランチャイズ(FC)展開する石川、みどり町、美里、宜野湾愛知、城間の5店舗で7月からコストコ商品の取り扱いを始めた。いずれも九州から商品を仕入れており、コストコの沖縄進出を見据えた「話題性づくり」(ひかり商事担当者)が狙いだという。

ディスカントストア「ビッグワン」でも一部店舗でコストコ商品の取り扱いを始めた=18日、浦添市のビッグワンFC城間店

 店内にはコストコの大きな4文字とともに「小分け販売がうれしい」「年会費不要」などと書かれたパネルを飾ってPR。ビッグワン特有のカラフルな売り場に、バスティッシュや大容量の柔軟剤などコストコの商品が溶け込む。扱っている商品は10品目程度で多くはない。担当者は「売れ行きを見ながら今後の展開を検討したい」と説明した。

■マーケティングの専門家は

 コストコの店舗展開に詳しい東京経済大の丸谷雄一郎教授(国際マーケティング論)によると、再販店は新型コロナウイルス禍を機に本格的に全国各地で広がりを見せた。コロナで経営が行き詰まった事業者やネット通販の配送業者、空き店舗対策で始めた事業者など担い手はさまざまだ。丸谷教授は「一口に再販店と言っても、立地によって戦略は変わる。1千アイテムを扱うところもあれば、50~100アイテムほどの店舗もある。独自の工夫でコストコ以外の商品を組み合わせて売り出す再販店も多い。沖縄でもコストコから離れた地域なら規模が大きく、比較的近い地域なら町中にコンビニタイプの店舗ができる可能性はある」と指摘した。