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<書評>『日本バスケの革命と言われた男』 信念貫く指導者の姿


社会
<書評>『日本バスケの革命と言われた男』 信念貫く指導者の姿 『日本バスケの革命と言われた男』安里幸男 文・内間健友、長嶺真輝 双葉社・1815円
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 バスケットボールに興味のある人なら、全く無名であった辺土名高校が全国高校総体で3位入賞を果たしたことを一度は耳にしたに違いない。1978年、筆者である安里幸男率いる平均身長160センチ台の小柄なチームが、目にも留まらぬ速攻とコート内を縦横無尽に駆け回る圧倒的な攻撃力で、一回りも身長差のある全国の強豪校を怒濤(どとう)のごとく撃破してきたのだ。“辺土名旋風”と称され、日本バスケ界は大激震に揺れた。

 本書は、筆者の長きにわたるバスケ指導者としての愚直なまでの一途な生き様(ざま)を通して、高校生の持つ恐るべきポテンシャルと、それを引き出す指導者としての信念を余す所なく描写している。

 91年、北谷高校率いる安里はチームを再度、全国総体3位へと導いた。「全国制覇する」と周囲からも笑われる目標を掲げてから10年余。その確固たる信念はついに93年の「能代カップ」で、能代工業高校打倒に結実する。本書ではこうした全国強豪校との試合展開が臨場感溢(あふ)れる筆致で綴(つづ)られているから、あっという間に読み終えていることに気が付くだろう。本書には、指導者としてのほとばしるような情熱、旺盛な研究心、揺らぐことのない堅い信念と、総じて言えば生徒たちの心をわしづかみにするその人間性が溢れ出ている。

 感銘を受けたのは、筆者が監督やコーチとして率いた全国総体と国体を合わせると、全国ベスト8以上に11回も入賞させたこと。本書をひもとけば明らかなように、ここまでに至る道のりは全てが全て順風満帆なわけでは決してない。あまりにも厳しい指導に生徒たちと衝突したことも一度や二度ではない。全国制覇に近づいたと確信を抱いた途端に県大会でつまずくことも何度もあった。

 特に「成功するコーチになるための五か条」は指導者として珠玉の心構えとなるに違いない。「沖縄は年々バスケ熱が高まる一方で、県内の高校生が近年、全国で勝てなくなって」いることに強い危機感を示しつつ、後輩のバスケ指導者に熱いエールを送る内容だ。

 (興南学園中学・高校長・諸見里明)


 あさと・ゆきお 1953年生まれ、大宜味村出身。母校の辺土名高校や北谷高校などのバスケットボール部監督・コーチを歴任し、全国で戦える強豪校へと導いた。国体の沖縄少年男子監督も務めた。