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<書評>『14年勤めた会社をやめて“働く””生きる”を聞いてきた。』 生き方として仕事選ぶ道標


<書評>『14年勤めた会社をやめて“働く””生きる”を聞いてきた。』 生き方として仕事選ぶ道標 『14年勤めた会社をやめて“働く””生きる”を聞いてきた。』内間健友著 ボーダーインク・1980円
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 直球のタイトルと、インタビューを受けた13人の顔写真が入った表紙が印象的な本書は、沖縄をはじめ世界で活躍する小説家、落語家、映像作家、ファッションスタイリストなどの「仕事と生き方」を紹介した本になります。著者である内間健友さんは元新聞記者ということで、文体は読みやすく、各章の最後に書かれた回顧録からは、それぞれの人物との誠実な関係性がうかがえます。

 登場する人物の共通点として、みんな社会人ではあるけれど、会社人ではない―ということに大きな意味があるように思います。就職活動をする人の大半は会社人になり、そのまま企業に属して生きていく人が多いでしょう。なので学校では企業に就職する方法を支援することはできても、どう生きたいかは教えられません。生き方は自分で見つけられないと仕方のないことではありますが、なかなか見つけられないからこそ、一筋縄ではいかないのです。

 あの職に就きたいという希望はあっても、どう生きたいかまでを仕事と繋(つな)げて実践している人は少ないのではないでしょうか。「仕事と生き方」の狭間で悩み、苦しみながらライフステージに合わせて答えを調整して年を重ねていくわたしたちは個人であって、同じ状況下でも、思うことや下す決断は異なります。そして行く末も個々人で異なりますが、その先について誰も知らないという点においては平等です。

 これからをどう働き、どう生きていくのか。本書を読めば、職種や年齢、性別にかかわらず、「働くこと」と「生きること」を結びつけながら進み続ける人たちに出会えます。この本に登場する人物の在り方全てに共感はできなくとも、独自の視点と行動で生き抜いてきた彼らひとりひとりの道筋は、きっとどこかにいる誰かの小さな道標(みちしるべ)になっているに違いありません。そういう意味でこの本は、生き方として仕事を選ぼうとする人への励ましの書だと言えるでしょう。

 (髙橋和也・本と商いある日、店主)


 うちま・けんゆう 1978年那覇市生まれ。2003年琉球新報社に入社、主に社会部、政治部記者を務める。17年に退職後はフリーライターとして活動。安里幸男著「日本バスケの革命と言われた男」の文章を共同で執筆した。