日米首脳会談、同盟の強固さ演出 見通しない県内理解


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普天間移設 首相、実現に空手形

 自民党が約3年ぶりに政権に復帰し、初めてとなった日米首脳会談。オバマ大統領と笑顔で固い握手を交わした安倍晋三首相は会談後の会見で「日米同盟が完全に復活した」と語気を強めた。

首相として6年ぶりに訪米した安倍首相の会談成功に向けた意気込みは強く、政権奪還による強固な日米関係の演出のため「普天間移設の早期実現」が強調された格好だ。ただ、沖縄の理解を得られる見通しは立っておらず、「県内移設実現」の空手形を切った形だ。米政府関係者は「辺野古移設に向けた環境影響評価は既に終了した。普天間移設を前に進めるべきだ」と強調するなど、安倍政権に対する期待度が高まっている。

■米政府に衝撃

 「普天間を進めるつもりはあるのか」。安倍首相が沖縄を訪問した2日。記者団に対し「(訪米前の埋め立て承認申請は)考えていない」と述べた発言が米側に伝わると、米政府内で衝撃が走った。首脳会談の準備をしていた米側当局者は日本政府高官に首相発言の真意を確認。「具体的に進めていく」という安倍政権の意向を確認し、2012年4月に合意した米軍再編について「日米首脳会談で早期に進めることで一致」というシナリオを日米双方で作り上げた。
 米国防総省は「辺野古が両政府で確認した唯一実現可能な移設先だ」と強調し、安倍政権の姿勢を評価。同省関係者は「基地の周辺は米国内でも沖縄でも経済的に潤う」と述べ、地元に歓迎されるとの見方を示した。

■懐疑的な見方も

 ただ、こうした日米両政府の前のめりな姿勢に懐疑的な見方も根強い。米外交問題評議会(CFR)のシーラ・スミス上級研究員は「普天間問題は民主党だけでなく、過去の自民党政権でも進展させることができなかった」と指摘。米政府や政策決定に影響力を持つシンクタンク内でも、普天間移設の実現性を疑問視する意見があることを示唆した。その一方で「国政選挙や名護市長選挙など日本国内の選挙のたびに普天間問題は引き延ばされてきた。日本政府は決断を迫られている」と述べ、繰り返されてきた日本政府の空約束に米側がしびれを切らし、具体的な進展を迫っている現状を説明した。
 安倍政権はこうした米側の“圧力”に敏感に反応。岸田文雄外相は日米外相会談後の記者会見で、辺野古移設に向けた埋め立て申請の時期について「地元の意向を確認しながら丁寧に進めていく」と予防線を張ったが、米側に重ねて「早期着手」を約束しており、首脳会談を契機に県内移設に向け地元の意向を無視した手続きが加速化しそうだ。(松堂秀樹)