政府 前のめり鮮明 辺野古埋め立て・漁協同意申請


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「市長選前」にじむ思惑
 22日の日米首脳会談で、安倍晋三首相とオバマ米大統領が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「早期実現」で一致してからわずか4日後。沖縄防衛局が名護漁業協同組合(古波蔵廣組合長)へ埋め立ての同意申請書を提出した。沖縄の反対世論は根強い中、首脳同士の約束を実行することに前のめりな安倍政権の姿勢が鮮明になった。近く、県への埋め立て承認申請も提出される見通し。移設の行方を左右する来年1月ごろの名護市長選を念頭に、仲井真弘多知事に市長選前の判断を迫る思惑もにじむ。

 「防衛局から名護漁協に(埋め立て)同意書の申請を行う」。小野寺五典防衛相がそう発言した直後に、防衛局職員2人が名護漁協に競りの最中の職員を訪ね、申請書を手渡した。

「補償」まだ
 沖縄防衛局が名護漁協に申請書を提出したのは、知事から埋め立て承認を得るには、漁業権を持つ漁協の同意が必要だからだ。同意書は埋め立て申請に添付が義務付けられてはいないが、知事の承認を得るには欠かせない。
 名護漁協は3月中にも開く臨時総会で承認を得る予定。環境悪化を懸念して反対する意見もあるが、古波蔵組合長は「99%同意が出る」と自信を見せる。
 ただ、国との漁業補償交渉はまだめどが立っていない。古波蔵氏も「一切まだやっていない。これからだ」と説明し、長期化の可能性もにじませている。
 県は、防衛局から埋め立て申請があった場合、知事判断までに約7カ月~1年との見通しを示してきた。防衛省関係者からは「約10カ月」と見通す発言が目立つ。仮に来月、申請があった場合、来年1月ごろの名護市長選前との計算だ。市長選への影響を消したい意図も見える。埋め立て申請と市長選について、防衛省幹部は「大いに関係はあるだろう」と述べた。

ハードル変わらず
 別の防衛省幹部は「古波蔵組合長は『99%同意が出る』と発言しており、心強い。先日は、移設推進の大会も開かれ、多くの人が参加したと聞いている。辺野古移設に反対の声ばかりでない」との認識を示す。
 だが、名護漁協が同意しても埋め立てへのハードルは極めて高い。県への埋め立て申請後、名護市長の意見聴取などの内容審査もある。稲嶺進名護市長は埋め立てに反対する意見を出すと明言し、与党多数の市議会での可決も確実だ。
 仲井真知事も26日、県議会定例会の県政運営方針で、県内移設を「事実上不可能」とし、県外移設を求める方針をあらためて明言した。
 県内全41市町村長らが県内移設断念を求める「建白書」を首相らに提出した盛り上がりは冷めていない。21日に名護市で開かれた移設推進大会は2011年より参加者が減り、容認する名護市議の一部は欠席した。辺野古移設に対する風当たりが強まる中、政府の前のめりの姿勢だけが際立つ。(内間健友、伊佐尚記)

沖縄防衛局が名護漁協に提出した埋め立てへの同意申請書の写し
沖縄防衛局が名護漁協に提出した埋め立てへの同意申請書の写し