地元県議の反発が影響 糸満市副市長人事案否決


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杉浦友平副市長の続投を求める議案を諮る糸満市議会=25日、同市議会

 【糸満】糸満市議会(上原勲議長)は25日、3月定例会最終本会議を開き、本年度で任期満了を迎える副市長の杉浦友平氏(60)の再任を求める人事議案を賛成少数(賛成7、反対15)で否決した。同市議会は議員定数24のうち、与党が16で多数を占める。上原裕常市長が提出した議案だったが与党市議のうち、9人が反対に回った。約4年にわたり、上原市政を支えてきた杉浦氏の予期せぬ再任否決。市幹部は「杉浦副市長は、多くの案件も抱えており、彼抜きで実行できるか、分からない重要案件もある」と話し、4月以降の市政運営に懸念を示している。

県との調整役
 杉浦氏は、2008年に初当選した上原市長から幾度にわたる就任要請を受け、09年、県の部長級のポストに当たる参事監から同市副市長に就任した。県では、主に総務や企画畑を歩み、現在の県幹部と面識があるほか、過去に市町村課長を務めた経験から、他市町村にも顔が広い。これまで県水産海洋研究センターの誘致や、09年の不発弾爆発事故の被害者への補償対策など、多数の重要案件の調整役を務め、市職員からの評判も高かった。

“直接折衝”に反発
 普段は空席が多い市議会傍聴席も、25日の本会議はほぼ満席となった。傍聴者の中には、地元糸満市区選出の新垣哲司県議(自民)の姿もあった。新垣県議と多数の傍聴者は、議案の中で、一番目に諮られた杉浦氏の人事議案を終えると一斉に退席した。
 同日の本会議では、同人事議案に対して、野党市議2人が反対の立場で、与党市議3人が賛成の立場で意見を述べた。採決で反対に回った与党市議らは、いずれも意見を述べなかった。
 多数の与党市議が杉浦氏の人事議案の否決に回った背景には、新垣県議の副市長人事に対する反発が影響したとある与党市議は指摘する。杉浦氏が就任する前は、地元県議を通して県へ要請することもあったとし「杉浦氏は、県職員出身ということを生かして県と直接折衝していた。そのことで県議の反感を買った」と漏らした。

一度も相談ない
 新垣県議は、本紙の取材に対し「県議として、糸満市民のために懸命に働いてきたが、(市政の重要案件について)杉浦氏から、これまで一度も相談がなかった」と説明。今回の人事議案は、多数の与党市議も反対していたとして、「市長と数人の側近が与党にも相談せずに、独断で人事議案を提出した。(否決は)市民や与党の不満が噴出した結果だ」と話した。
 上原市長は「これまでの実績や私との信頼関係から、杉浦氏の再任を提案し、与党市議にも説明を尽くしてきた。今後、市政内部のまとめ役となる人材がいなくなり、市政運営に影響が出てくる」と話し、杉浦氏の再任が否決されたことを残念がった。(梅田正覚)