県、政府思惑を一蹴 官房長官来県


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宜野湾市役所の屋上から米軍普天間飛行場を視察する菅義偉官房長官(中央左)。隣は佐喜真淳市長=3日午後

返還計画と関連否定 「普天間」切り離し求める
 来県した菅義偉官房長官は嘉手納基地より南の米軍施設・区域の返還に関する統合計画について米側との交渉に「鋭意努力している」と説明、普天間飛行場の辺野古移設を日米合意に沿って進める方針をあらためて示した。5日にも発表される同計画の公表前に沖縄を訪れ、普天間返還問題との関連を明確に印象付けることで、辺野古移設への県民理解を得るための“地ならし”とする政府の思惑が見え隠れする。

■「前に進める」
 菅氏と会談した仲井真弘多知事は冒頭のあいさつで県外移設に言及。一方、菅氏は返還計画に関して日米首脳会談で安倍晋三首相が直接要請したことを強調しつつ、辺野古移設には「地元の理解が得られるようこれからも取り組んでいく」と述べるにとどめた。
 しかし会談後、知事の県外移設要求について菅氏は「皆さんの声に耳を傾けながらも行うべき点は前に進めていきたい」と述べ、あくまでも辺野古移設の方針を崩さないとする政府の強固な姿勢を際立たせた。
 さらに、「県民の皆さんにご理解いただけるよう嘉手納より南の返還も含めて結論を出していきたい」として、辺野古移設と返還計画を明確に関連付けた。
 一方で、知事は「普天間の移設先以外は全部賛成」と普天間移設と返還計画の明確な切り離しを求めた。県幹部も「返還計画と普天間問題は関連付けられるものではない」と語り、負担軽減と辺野古移設推進を関連付ける政府の思惑を一蹴。県と国の捉え方の違いも鮮明となった。

■メディア行脚
 菅氏は今回、那覇市内にある地元新聞社、テレビ局を相次ぎ訪れ、各社幹部と面談、普天間の県内移設に理解を求めた。官房長官が“メディア行脚”に乗り出すのは極めて異例。しかし今回、菅氏から新たに提示された基地負担軽減策などは無く、県幹部は「『官房長官が顔を出した』と県民に示すことだけが狙いだろう」と来県に冷ややかな見方を示した。
 首相や閣僚の相次ぐ沖縄訪問について政府関係者は「とにかく関係閣僚や自民党関係者が沖縄に足しげく通うことが大事だ」と強調する。与党関係者は「大田昌秀知事と橋本龍太郎首相の会談は17回にわたって行われた。知事との会談を重ねる中で、信頼構築していくだろう」と指摘する。
 政府は今後、閣僚らの沖縄訪問を重ね、振興策や嘉手納より南の施設・区域の返還計画を示すことによって沖縄への攻勢を強める方針だ。「県民理解を得る」としつつも、辺野古移設の方針を崩さない政府の強硬姿勢と地元とのせめぎ合いが本格化していく。(池田哲平、問山栄恵)