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昨今の沖縄ガイドブックの氾濫はどうだろう。多くは見どころとグルメ、ショッピングなどを広く浅く紹介したもので、素通り観光ではなく、沖縄をもう少しじっくり見ようとするには物足りない。かと言って、歴史や文化の専門書は旅行者には重すぎる。
リピーターや、テーマを絞って旅したい人のために、ぴったりのガイドブックが生まれた。アプローチの手段として、首里城を中心に、県内九カ所の世界遺産を訪ねることに焦点を絞り、そこから琉球の文化、歴史に踏み込んでいこうという趣向である。
赤い表紙は、漆塗りの首里城正殿の色。真っ赤なフェラーリの車体を思わせると池上永一さんは言う。歴史の第一人者、高良倉吉さんの監修とガイドによるものだから、しっかりした内容になっている。
私がかつて高良さんに浦添城址を案内していただいた時のことを思い出した。それでいて読みやすいのは、県内機内誌「コーラルウエイ」の編集メンバーが知恵を絞ったからだろう。垂見健吾さんの写真は、読者を琉球史の世界にグイグイと引きつけていく。
こうして読者はいつの間にか、グスクを通じ、宮廷を中心にした琉球の歴史、祈り、工芸、芸能、料理などを知ることになる。
よくぞ戦争をくぐり抜けた国王の王冠や絵姿、幕末に5回も琉球を訪れたペリー提督の遠征記、現代版組踊の誕生に至るまで、興味深い話題も多く盛られている。首里城周辺の地図や「東御廻り」コースの紹介もある。
琉球国の絵図を見ていると、交易を通じて世界の懸け橋となった小さな王国が、目に浮かんでくるようだ。この豊かな国を滅ぼしたのは誰であったのか、これら世界遺産群を公共交通で巡ることが難しいのはなぜか、思いはそこまで至るのである。
本土向けに書かれた本ではあるが、地元の皆さんにこそ読んでいただき、この島に誇りを持ってほしいと思う。
(エッセイスト・ゆたかはじめ)
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たから・くらよし 1947年伊是名村生まれ。浦添市立図書館長、琉球大学法文学部教授を経て、副知事。著書に「沖縄歴史論序説」「琉球の時代」など。
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