涙さそう親子の絆 劇団うない「昔子守節」


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「昔子守節」を歌い、カナシー(左、祖慶しのぶ)を抱き締める太良(中曽根律子)=16日、沖縄市民会館

 「敬老の日」の9月16日周辺に、沖縄芝居の各劇団が県内各地で公演した。親子の愛や男女の恋を描いた舞台にお年寄りや子、孫が共に笑い、涙を流した。

 劇団うない(中曽根律子代表)の敬老の日特別公演「昔子守節(んかしくゎむやぶし)」(同劇団主催、まちづくりNPOコザまち社中共催)が16日、沖縄市民会館であった。玉城敏彦作、中曽根演出。乙姫劇団から受け継がれた、血のつながらない親子の絆を描いた名作。前半と後半を入れ替える新たな構成で上演し、よりドラマチックな展開となった。
 百姓の太良(たらー)(中曽根)は自分の子ではないカナシー(祖慶しのぶ)を育て、仲良く暮らしている。カナシーは士族の松金(まちがに)(佐和田香織)と恋仲になるが、松金の叔父・真三戸(まさんどぅ)(佐和田君枝)らは身分の違いを理由に反対する。太良は、カナシーが、自分のいいなづけだったカナミー(久米ひさ子)と侍との間にできた子であると説明。真三戸は、カナシーの本当の父が自分だと気付く。
 これまで前半にあったカナシー誕生の経緯を、後半に太良が回想する形に変更した。
 前回の太良役は、青年時代も年を重ねた後も中曽根が演じたが、今回は青年時代に比嘉いずみを配役した。比嘉はより感情を表に出し、若さのみなぎる新たな太良像を見せた。
 真実を知ったカナシーは太郎の元に帰ろうとするが、太良は松金と結婚するよう促す。別れ際に思い出の「昔子守節」を聞かせる太良。ひとり去っていく姿に、客席からすすり泣きが漏れた。父性と哀愁がにじむ壮年期の太良を演じられるのは、今は中曽根しかいないだろう。若い団員も、味わい深い中曽根の芸を継承していってほしい。
 その他の出演は島静子、仲里松子、嘉陽田早苗、花岡尚子、比嘉一惠ら。地謡は、西門悠雅、兼城米子、澤井毎里子、米増健太。