被災地の子に笑顔を 岩手・大槌町に「夢ハウス」


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 【岩手県で田吹遥子】東日本大震災の津波によって大きな被害を受けた岩手県大槌町で、集落の跡形もなくなった高台に開設した遊び場「子ども夢ハウスおおつち」に、子どもたちのはじけた笑い声が響く。

夢ハウス開所の発起人は、金武町の琉球リハビリテーションの学院長で作業療法士の藤原茂さん(65)だ。震災後「子どもの心のケアは二の次にされ、2年半たった今でも放置されている」と語り、子どもたちの話を聞く大人がいる遊び場の必要性を強調。「多くの人に被災地の現状を知ってほしい」と訴えた。
 夢ハウスを開所したのは、仮設住宅で自殺する子どもがいるという話を聞いたのがきっかけ。「震災後、子どもたちは学校と家の行き来のみで道草ができない。遊び場があり、話を聞いてくれるスタッフがいたらいい」。こう考えた藤原さんは、自身が理事長を務めるNPO法人「夢の湖舎」を中心に、ことし4月に夢ハウスを開所、思いが結実した。
 夢ハウスは空き家の民家を利用し、ボランティアや寄付金で運営する。現在、多いときには約20人の子どもたちが学校帰りに通う。外で遊んだり、部屋の中で宿題をしたりと思い思いのことをし、夕方にはそれぞれの家に帰る。夢ハウスに訪れる子どもたちは津波で家族や友達ら身近な大切な人を震災で亡くした。藤原さんは自然に接することを心掛けている。「異常な経験をしているからこそ、普通の生活ができるようにしたい」と話す。
 14日は夢ハウスの子どもたちや地元の人、ボランティアらが公園造りに精を出していた。中学1年生の田中絵美里さん(13)は「とてもすてきだなって思う」と新しい公園ができるのが待ち遠しい様子。手伝いに来た近所に住む小國ヤスさん(81)は「津波で家が流れていった。一瞬でなくなったことが悔しいから動く。動かないと絆も出会いもない」とせっせと道具を運んだ。
 沖縄と大槌を行き来する藤原さん。「沖縄で被災地への認識が薄いのと同様に、被災地では沖縄問題への関心が薄い」と話す。「どちらも命や平和に関わる。それは戦争や基地問題を経験してきた沖縄でも共通する。住んでいる場所にかかわらず、伝えていくことでお互いのことを考えていけたらいい」と話した。

新しい公園造りに精を出す大槌町の子ども(左)とボランティア職員=14日、岩手県大槌町の「子ども夢ハウスおおつち」
藤原茂さん(琉球リハビリ学院長)