生活保護支給停止 那覇市が処分取り消し「適正さ欠いた」


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 那覇市から生活保護の支給を停止された女性(62)が、那覇地裁に停止処分の取り消しを求めていた訴訟で、那覇市が9月30日付で同処分を取り消した。16日、女性側の弁護団が県庁で会見し、明らかにした。

女性は「生活保護が止められる恐怖が常にあった。本当にほっとしている」とのコメントを発表した。一方、那覇市保護管理課は「一部に適正さを欠いていた」と述べた。
 那覇市は2010年12月、女性に週5日以上、1日4時間以上の仕事に就くことなどを指示し、期限までに従わなかったとして生活保護を停止した。
 訴訟ではこの「就労指導指示」の違法性が争点となった。厚生労働省は全国会議の資料で、就労の実現を求める指示は「本人の努力のみでは実現が不確実な指示で、無効だ」との見解を示している。弁護団は、女性の腰に疾患があることや高齢で仕事が探しづらい点も含め「仕事に就くことを求める指示は違法だ」と主張していた。
 大井琢弁護団長は「那覇市がようやく処分は誤りと認めた」と話し、「生活保護の運用を変えるきっかけとなってほしい」と話した。同弁護団が入手した資料では、那覇市が生活保護を停止した90件のうち、同様に就労指導指示に従わなかったとして保護を停止した事例が17件あるという。
 那覇市保護管理課は今後も期日を設けて指示をするが、表記は「就労先を探す」などとする方針。訴訟を踏まえ、12年10月から保護課の管理職や班長計約20人が参加する診断会議で文書の文言を確認している。新設された稼働能力判定会議では健康面、家庭状況を踏まえ総合的に判定している。