沖縄戦遺骨、DNA鑑定進まず 身元判明10年で2件


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 厚生労働省が2003年度から始めた戦没者遺骨のDNA鑑定で、沖縄戦戦没者の件数は8月末現在、48件(全国1676件)あり、うち身元が判明したのは2件にとどまっていることが20日までに分かった。

県内では年間100~200柱ほどの遺骨が見つかるが、鑑定をするには「名前のある遺品」が必要などと条件が厳しいため、ほとんどが鑑定にたどり着いていない。沖縄戦戦没者の遺骨を収集しているボランティア団体は「鑑定の条件が厳しすぎる」と指摘している。
 旧ソ連地域や南洋群島といった戦地から収骨された遺骨は877人の身元が判明しているが、県内での身元判明は2人にとどまっている。2人はいずれも県外出身の日本兵だ。厚労省は南方地域は高温多湿なためDNAが壊れやすく、抽出しにくいとしている。これに対し、旧ソ連地域は寒冷・乾燥した気候で、遺留品や戦没者の所在に関する資料が比較的残っているという。
 厚労省統計によると、県内の収骨は09年度173柱(全国8965柱)、10年度128柱(同8097柱)、11年度159柱(1983柱)、12年度103柱(1223柱)。
 県内で精力的に遺骨収集を続ける、遺骨収集ボランティア団体ガマフヤーの具志堅隆松代表は、収集した全遺骨と、希望する全遺族のDNA鑑定、それらの記録保存(データベース化)を国の戦争責任として実施するよう求めてきた。
 具志堅代表が出した同趣旨の陳情を県議会や約半数の県内市町村議会が採択している。これに対し厚労省社会援護局はDNA鑑定は「遺留品が出てくる場合に限る」などと原則を挙げ、要望には応えられないという姿勢を崩していない。
 具志堅代表は「兵隊100人の遺骨のうち名前のある遺品がある例は5人にも満たない。まして戦火を着の身着のまま逃れた住民らは遺品所持は皆無だ」と強調。沖縄戦は一般住民の犠牲者が多いのが特徴だが「国の条件はそれが考慮されていない」と指摘した。また、多くの沖縄戦遺族に「DNA鑑定に関心を寄せてほしい」と訴えた。(石井恭子)