沖縄の役割に議論集中 県が初の安保フォーラム


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 那覇市内で11日開かれた「万国津梁フォーラム」は、県が「東アジアの平和と安全保障」をテーマに初めて開いたシンポジウムとなった。地方自治体が地域の安全保障に関して主催する異例の討論会の背景には、尖閣諸島をめぐる日中関係の対立に加え、一向に進まない米軍基地の負担軽減などの問題を多角的に検証し事態の打開につなげたいとの意向がある。日中米3カ国と台湾から13人の研究者らが登壇。必ずしも地元の立場に理解を示す見解ばかりではなかったが、地域の安全保障に沖縄が果たす役割の重要性では一致。県の施策や判断に示唆を与えた。

 「尖閣をめぐる日中対立をエスカレートさせず沈静化させ、平和的に解決することが大事だ」。シンポの冒頭、基調講演した高良倉吉副知事は尖閣問題などに対する県の立場と今回の議論の方向性を明示した。

軍事と文化
 フォーラムでは、尖閣問題への認識や、尖閣問題で沖縄が果たすべき役割などに議論が集中したが、意見が分かれる場面もあった。
 尖閣をめぐり日中間の小規模衝突が起こる可能性を指摘した政策研究大学院大の道下徳成准教授は「衝突回避のため前方で監視するのが重要だ。沖縄の安全保障上の役割は高まっている」と発言。東京大大学院の高原明生教授は「東アジアで国家間の緊張が増す」と強調し、「沖縄の米軍基地負担の軽減、整理縮小の方向性はいいが、急激な力のバランスの変化は危険だ」との見解を示した。
 一方で軍事的な観点ではなく、文化や価値観で相手を魅了し、地域の秩序に影響を与える「ソフトパワー(柔らかい力)」の視点から沖縄の重要性を指摘する声も多かった。
 台湾中央研究院近代史研究所の林泉忠副研究員は、沖縄戦の経験などから来る沖縄の「ソフトパワー」の可能性を強調。「沖縄が自信と自覚を持つことが大事だ」と訴えた。米ジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ教授も「沖縄には地上戦の体験など歴史的な背景があり、東アジア問題の和解に貢献することができる」と期待した。

開催の意義
 沖縄の基地の重要性を指摘する意見も上がったことについて高良副知事はシンポ終了後、「なぜそういう指摘があるのか、背景には何があるのかを正確に認識することが大事だ」と強調した。
 県は昨年4月、安全保障について情報収集、研究する地域安全政策課を設置し、基地負担軽減などの在り方を探っている。フォーラムはその一環で、今回で2回目だ。又吉進知事公室長は閉会あいさつで「開催して良かった。今後もやり続けなければいけない。この地域に住むものとして、いかに近隣諸国と交流していくか、示唆をもらった」と意義を強調し、締めくくった。(宮城久緒)