師の志、受け継ぐ力演 琉球交響楽団


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琉球交響楽団と琉響合唱団の荘厳な調和で聞かせた「1812年」=19日、浦添市てだこ大ホール

 19日に浦添市てだこホールで開かれた琉球交響楽団の第24回定期演奏会は、12日に死去した祖堅方正代表に追悼の思いを込めた公演となった。

冒頭でモーツァルトの賛美歌「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を演奏し、指揮の大友直人が呼び掛けて出演者、来場者が黙祷。沖縄からNHK交響楽団首席トランペット奏者として活躍しただけでなく、沖縄で演奏家が活動する土壌を肥やすことに情熱を燃やした祖堅を偲(しの)び、その志を継ぐ思いを、出演者は演奏で表現した。
 大友は「通常はフィナーレを飾るような華やかな2曲を、ひとつの演奏会で奏でる。日本のトッププレーヤーとして一世を風靡(ふうび)した祖堅先生ならではの構成だ」と紹介。チャイコフスキーの祝典序曲「1812年」はナポレオン率いるフランスの侵攻を受け、ロシアが勝利するまでを描くスケールの大きな曲。最終盤は勝利を知らせる鐘や、大砲の音を思わせる打楽器の力強い演奏で聞く者を圧倒した。
 レスピーギの交響詩「ローマの松」は華やかで変化に富んだ曲想。松林で遊ぶ子どもたちの声を連想させるにぎやかな第1部、一転して樹陰の洞窟から聞こえる悲しい歌声を描く第2部は低くゆっくりと運ぶ。鳥の鳴き声がこだまする第3部を経て、力強い行進のリズムを刻む第4部で幕を下ろす。
 県立芸大などで祖堅らが育てた演奏家たちの巧みな演奏は、祖堅が残した置きみやげがこの公演だけではないことを示唆していた。