自在に、地平切り開く調べ クァルテット・コア


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クァルテット・コアの(左から)岡田光樹、屋比久潤子、山里郁子、庭野隆之=18日、那覇市のパレット市民劇場

 弦楽四重奏の鮮やかな調和に、新たな地平を切り開く決意をにじませた。岡田光樹(バイオリン)、屋比久潤子(バイオリン)、山里郁子(ビオラ)、庭野隆之(チェロ)でつくる「クァルテット・コア」の第7回演奏会が18日、那覇市のパレット市民劇場で開かれた。

2004年の結成以来、さまざまな舞台で演奏活動を繰り広げてきた4人が「新世界へ」をテーマに、19~20世紀を駆け抜けた3人の作曲家に焦点を当てた。
 ドボルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」で幕を開く。19世紀末、国際的な名声を得てなお新たな境地を目指した作曲家。欧州で築かれた古典とアメリカの風土を組み合わせ、生み出された旋律は、独自の発展を遂げていく新大陸の希望を映し出す。広く親しまれる交響曲「新世界より」にも通じる、華やかな演奏を展開した。
 バーバー「弦楽四重奏のためのアダージョ」は映画「プラトーン」で使われ、有名になった曲。バーバーも19世紀の西洋音楽を踏まえ、アメリカの様式を探し求めた作曲家。
 最後はシューベルトの弦楽四重奏曲第12番「死と乙女」。ロマン派の先駆的作曲家が生み出し、R・シューマンが「天国的な長さ」と形容した壮大な楽曲。豊かな歌謡性を4人の息のあった演奏で聞かせた。
 欧州で築かれた古典を習得し、表現の前線を追い求め、さらに新たな風土を取り込むことで旧来の様式を破壊した3人の作曲家。一方で沖縄を舞台に、明確なテーマを設定した公演を重ね、モーツァルトなど古典の名曲からピアソラら現代音楽までに焦点を当て、幅広く表現してきたクァルテット・コア。
 新たな王道を築いた開拓者たちの精神を、古典に息づく“新しさ”を、沖縄で弦楽の前線にいる演奏家たちが自在な演奏で体現した。(宮城隆尋)