イリオモテヤマネコ 輪禍多発、絶滅の危機


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 【竹富】竹富町西表島のみに生息する国指定特別天然記念物イリオモテヤマネコの交通事故がことしに入り過去最多の6件になったことを受け、環境省那覇自然環境事務所と竹富町は25日、緊急事態を宣言した。

イリオモテヤマネコの生息数は約100匹とみられており、毎年このペースで交通事故が起きれば絶滅の可能性もあるという。関係団体は事故防止のため、「島速度」(法定速度の時速40キロ、集落内は30キロ)を守るよう、島民や観光客に呼び掛けている。
 非常事態宣言は2001年、10年に続き3回目。事故は統計がある1978年以降、62件発生している。
 交通事故はことし5月14日~10月20日にかけて6件発生し、5匹が死んだ。残る1匹は生きた状態で発見され、山中に逃げたが、出血状況から死んだ可能性が高いという。6件中3件が子ネコの事故だった。
 秋から冬にかけて、親離れしたヤマネコは自分のテリトリー(縄張り)を持とうとして移動を繰り返す「放浪」と呼ばれる行動を取る。さらに繁殖期の雄が雌を求めて動き回ることから、交通事故が起きやすいという。過去の統計では11月の事故が最も多く、環境省や町は危機感を強めている。
 事故が多発しているのは西表島東部と北岸の道路。ヤマネコは日没後や夜明け前に活動が活発になるため、事故は午後8~11時に起きている。
 同センターや町は、事故が起きた場所や子ネコが目撃されている場所などに移動式看板を設置したり、車の見通しが良くなるよう県道沿いを草刈りしたりして、事故防止に取り組んでいる。