被害、表面化難しく ハンセン病在宅治療者「問題終わってない」


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退所者の現状について報告する全国退所者連絡会の平良仁雄代表(右から2人目)=26日午後、那覇市の市町村自治会館

 ハンセン病回復者のうち、療養所に入所せずに治療を受けた在宅治療者(非入所者)についてのシンポジウム「沖縄・ハンセン病在宅治療者の問題を考える」(らい予防法違憲国家賠償訴訟西日本弁護団主催)が26日、那覇市の市町村自治会館で開かれた。登壇者は、表面化しづらい非入所者の被害実態などを報告し、「ハンセン病問題はまだ終わっていない」と社会の理解を求めた。

非入所者についてのシンポジウム開催は県内で初めてで、全国的にも例がないという。
 沖縄では琉球政府時代に在宅治療が始まり、復帰後も特例措置として認められていたため県外に比べて非入所者数が多い。非入所者は、裁判手続きにより和解金の支払いを受けられるが、那覇地裁での和解は10人にとどまっている。
 稲山聖哲弁護士と上原智子弁護士は、担当した非入所者の体験談を報告した。発覚するのを恐れて職場で昇進を断った例や、両親が発覚を恐れて病院に連れて行かず、父が沖縄本島で買ってきた薬を飲んでいたという離島出身者の例を紹介。
 稲山弁護士は「隔離されていない非入所者の問題は分かりづらい部分があるが、夢を奪われたり退職を余儀なくされたりした人が多いことを知ってほしい」と理解を呼び掛けた。
 沖縄愛楽園の退所者で全国退所者連絡会の平良仁雄代表(74)は「多くの人が過去を知られることにおびえながら生きている」と話し、非入所者や退所者が周囲に打ち明けられない現状を強調した。
 琉球大法文学部の森川恭剛教授は、琉球政府が1955年に日本のらい予防法を引き写した法案を作っていたとして、当初は全患者隔離を目指していたことを指摘した。
 27、28日の午前10時から午後4時まで、電話相談会も実施される。沖縄合同法律事務所(電話)098(853)3281まで。