カルストツアー評判に 八重瀬「具志頭・多々名城地溝帯」


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「具志頭・多々名城地溝帯」のフィッシャー=4日、八重瀬町玻名城

 【八重瀬】八重瀬町玻名城から長毛の一帯は、大小無数のフィッシャー(岩の割れ目)が連なる全国でも珍しい地形となっている。この地形は「具志頭・多々名城地溝帯」と呼ばれ、南北に約3キロ広がる。

最北には1万8千年前の化石人骨「港川人」が発掘された港川フィッシャー(町長毛)があり、歴史的にも意義深い。中でも玻名城の多々名城跡周辺の密林が、一帯の特徴的な地形を特に表しているポイントだ。この密林は2012年から「熱帯カルストツアー」として一般公開されており、参加者から評判を呼んでいる。
 09年、NPO法人沖縄鍾乳洞協会の理事長を務める山内平三郎さん(66)=町宜次=が町から依頼を受けて密林を調査し、一帯の地形を発見した。国内で約1500にも及ぶ洞窟を探検・調査してきた山内さんだが、「このような地形は全国どこにもない」と驚きを隠せなかったという。
 密林のフィッシャーで最も規模が大きいのは、幅5メートル、長さ50メートル、深さ15メートルあり、まるで峡谷のようだ。ツアーでは、このフィッシャーの間や狭いガマをくぐり抜ける。大小無数のフィッシャーは戦時中、旧日本軍の陣地壕として使用されており、今も靴や食器など多数の遺品が散乱する。
 山中には、28億年前の地球で生まれたラン藻類「シアノバクテリア」が付着した石灰岩も見ることができる。当時、地球は二酸化炭素に覆われていたが、シアノバクテリアの光合成によって酸素が供給され、人類を含む無数の生物の誕生に至った。
 今では地球は酸素に覆われているため、シアノバクテリアの活動域は少なくなった。山内さんは「地球の誕生までさかのぼる壮大な歴史が垣間見える」と強調する。
 ツアーを体験した山崎千暖さん(25)=同町=は「豊かな自然だけでなく、戦争の跡も見ることができて驚きの連続だった」と感想を述べた。ツアーの参加は有料。問い合わせは山内さん(電話)090(1517)2027。(梅田正覚)
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フィッシャー
 石灰岩が海の波に浸食され、重みに耐えきれず割れてできたくぼみのこと。「具志頭・多々名城地溝帯」の石灰岩は他地域よりも厚いため、波に浸食されても岩石が崩れず、多数のフィッシャーが形成されたとされる。