海の事故ゼロまで 琉球水難救済会、救助人数4000人


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タグボート乗組員を救助し、表彰される琉球水難救済会所属の漁船船長ら=2011年12月12日、糸満漁業協同組合(琉球水難救済会提供)

 沖縄近海では年間約80隻の船舶海難があり、海岸では約120人が溺れるなど海の事故に遭っている。マリンレジャー中の事故だけで年間約20~40人が犠牲となり、ことしは9月末までに15人が死亡または行方不明となっている。

そんな事故が起きた時、真っ先に現場に向かう人たちがいる。琉球水難救済会(比嘉榮仁会長)に所属する約4500人の漁師やライフセーバーだ。現場に近い救難所員が仕事を中断し、自船を操って救難活動に当たる。1957年の設立以来、彼らが救った人数は約4千人にも上る。
 2011年11月、大しけの中、那覇港から中城港に向かっていた約19トンのタグボートが糸満市喜屋武岬沖で転覆した。第11管区海上保安本部から要請を受け、喜屋武漁協に停泊していた約3トンの漁船が救助に向かった。
 なぜ民間の漁船が救助に向かうのか。「漁師は常に危険と隣り合わせ。同会はもともと、海難時に漁師が『相互扶助』するために設立された。だから、助けられる人には必ず手を差し伸べる」と同会の浅野貞雄常務理事(67)は話す。
 荒れた海域でタグボートは見つからない。漁船の船長は経験を基に潮の流れを見ながら捜索し、ついに乗組員の1人を発見、救助した。衰弱して危険な状況だったという。ことし3月には座間味島付近で座礁したレジャーダイビング船から乗客ら30人を救助した。
 浅野さんは「その海域を一番理解している人間が、一番早く駆け付けて救助できる」と、同会の存在意義を語る。第11管区海上保安本部の小林正朝救難課長は「後遺症の有無など救助の質を考えた上でも、スピード感を持って駆け付ける救済会の存在は大きい」と強調する。
 浅野さんは「海はつながっている。救難所同士の横の連携と海保などとの縦の連携をさらに強めて、海での死亡事故をゼロにしたい」と力を込める。
 琉球水難救済会は救難所職員の訓練や機材整備費などに充てるため「青い羽根募金」活動をしており、協力を呼び掛けている。問い合わせは同会(電話)098(868)5940。(大嶺雅俊)

<用語>琉球水難救済会
 海難事故の多発化に対応するため1957年に設立された公益社団法人。ボランティアで海難救助に当たる同会所属救難所員(漁業組合員ら)の訓練や報償などを行う。救難所は漁業組合や海洋レジャー関係施設に70カ所設置されている。運営資金は自治体からの助成金や寄付金などで賄っている。