重粒子線がん治療施設 候補地に西普天間跡地


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 がんにピンポイントで放射線を当てて治療する重粒子線がん治療施設の導入可能性について、県が調査を委託した検討協議会は31日、2014年度末までの返還が予定されているキャンプ瑞慶覧の西普天間返還跡地(宜野湾市)を候補地とし、公設民営型の施設を検討するとした中間報告を取りまとめた。施設建設費は沖縄振興交付金(一括交付金)の活用を念頭に150億円と試算。協議会は年度内に最終報告をまとめ、仲井真弘多知事が事業着手を最終決断する。

 現在全国で4施設が稼働しており、神奈川県では1施設が建設中。中間報告では、患者の体位を変えずに360度任意の方向から照射が可能な次世代型装置「回転型ガントリー」などを導入し、直径20メートルの装置を約5千平方メートルの施設に整備することを提案。建設期間は4年を想定している。
 重粒子線治療は先端医療のため保険が適用されず、診断から治療まで総額約300万円かかる高額医療。県内からの利用患者は100~150人程度にとどまるとみており、施設の安定運営には最低でも年間500人程度の利用が必要との認識も示した。今後、協議会では海外や県外から患者を呼び込む医療ツーリズムの検討を進める。また、琉球大学や放射線医学総合研究所(千葉県)と共に人材育成に取り組む。
 12年度の基礎調査では機器メーカーからのヒアリングで、放射性物質などが残る装置の廃棄について課題が挙がった。協議会は放射性物質が残らない最新機器の使用を要望する方針だ。
 県の政策参与でもある県医師会副会長の玉城信光医師は、協議会後の記者会見で「患者の治療を中心にしながら最先端の技術開発ができればと思う。県民が納得する施設にしてほしい。お金の問題は今後作業部会で詰めたい」と述べた。

<用語>重粒子線治療
 がんの病巣に放射線を照射し、がん細胞の増殖を抑えて消滅させる治療法。メスを使って切除しないため、体への負担が少ない。がんの病巣をピンポイントで照射して破壊する特性から、正常細胞への照射を最小限に抑えることができる。局所療法で、治療の対象は固形がんの肺がん、肝臓がん、前立腺がん、骨軟部肉腫など。従来の放射線治療であるエックス線などに比べ、照射回数が少なくて済む。